夏休みが終わり、早い学校では8月22日前後から新学期がスタートする。これからやって来る9月は1年で最も子どもの自殺が増える時期だ。「不登校新聞」編集長の石井志昂さんは、子どもたちを死に追いやっているのは「目に見えるいじめ」だけではないと訴える。あなたは“子ども”にどんな目線を向けていますか?
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「もう死にます、ごめんなさい」
そう覚悟を決めたのが小学校6年生の秋だったと、ある女性(現在15歳)は言いました。
同級生からいじめを受け始めたのは、小学校5年生のとき。自分のまわりを通るときに鼻をつまんで「クサイ」と言われ、「×日前にも同じ服を着てたよね」「○○で給食、食べてたよね」など、その一挙手一投足を遠巻きに見てバカにするようにささやかれたそうです。
彼女はいじめを家族の誰にも言えませんでした。「きっとわかってもらえない」と思っていたのが理由です。
誰にも相談できないまま、ガマンして毎日いじめられる学校へ通っていましたが、先生からの叱責がきっかけで感情が一気に爆発。家で泣きながらこう思ったそうです。
「この世のすべてものに謝りました。もう死にます、ごめんなさい」
その後、彼女は保健室登校になりましたが、中学でもいじめにあい、現在は不登校中です。
■9月1日は子どもの自殺がピーク
9月は「9月1日」を頂点に子どもの自殺がもっとも多い月です。なぜ子どもたちが追い詰められてしまうのかを考えたとき、彼女のケースからわかることは多くあると思います。
一つは、自殺リスクが高まる人は、かならず自分の存在自体が否定される経験を積み重ねているということです。
子どもの自殺が起きると、大人は暴言や暴力など「目に見えるいじめ」があったのかを探します。しかし、いじめの本質は目に見える暴力ではありません。「存在否定の眼差し」こそが、いじめの本質です。「無視」のような一見すると暴力とは思えない「視線だけの暴力」が成立するのも、眼差しに暴力性が込められているからです。しかもそれによる苦しみは周囲に理解してもらいにくいのです。