成毛眞さん(撮影/大嶋千尋)
成毛眞さん(撮影/大嶋千尋)

 今から10~20年後、約半分の職業が人工知能(AI)に取って代わられる時代が来るという。AI時代という、パソコンの登場以来の大きな変化に乗るためのカギは“理系脳で考えられるかどうか”にある。自らも文系出身だった元マイクロソフト社長・成毛眞が説く理系脳とは? 最新刊『理系脳で考える』でその一部を明かしている。

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 2030年には、日本の労働人口の49%がAI(人工知能)やロボットに代替される。野村総研が2015年にまとめたこのレポートはあちこちで波紋を広げている。2030年といえば、2017年の今からたったの13年後。現在40歳の人は53歳で、まだまだしっかり働き、しっかり稼がなくてはならない時期だ。それなのに半分近くの人の職がAIやロボットに奪われるというのだから、来たるべき未来に震える人もいるだろう。

 あなたが49%の側になるか51%の側になるかは、今現在、どんな仕事に就いているかで決まるわけではない。また、理系出身であるか文系出身であるかで決まるのでもない。

 この二つを隔てるのは、理系脳であるか文系脳であるか、これだけだ。

 理系脳とはすなわち、これからも急速に変化する科学や技術の分野にキャッチアップできる柔軟性と進取の気性を併せ持っていることだ。

 ドッグイヤーという言葉がある。犬にとっての1年は人間の7年に相当することから、ほかの分野に比べて7倍速といえるくらい急速に進化する分野を表現するのに使われる。私がマイクロソフトにいた頃のIT業界はまさにドッグイヤーだった。

 そして今、AIやロボット、センシング、ビッグデータ解析、再生医療などの分野はドッグイヤーなど比ではない速度で変化している。今日の常識が明日には時代遅れになっていても不思議でないこれらの分野では、過去の蓄積だけでは仕事ができない。一見、AIともロボットとも無縁に感じられる分野でも同様だ。

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