■質素ではなく「粗雑」、簡素ではなく「安易」
このように昔ほど形式にこだわらず、さまざまな方法を選びやすくなりました。ただ、簡素な葬式にしたいと願う人は多いものの、コストや合理性を追い求めた結果、質素ではなく「粗雑」、簡素ではなく「安易」な葬式になってしまう残念なケースも見受けられます。
そこで、葬式の本来的な意義を踏まえたうえで、葬儀と告別式を切り離して考えてみてはいかがでしょう。儀礼としての宗教的な要素は残しつつ、告別式は自由な発想、スタイルで行うのです。
たとえば後日、趣味や好きな音楽を生かした「お別れの会」を開き、仲間に集まってもらってもいいでしょう。元気なうちに自ら別れを告げる「生前葬」という方法もあります。自分らしい葬式のイメージを具体化してみましょう。
【葬式のプロセスと主な手法】
(1)納棺 (2)通夜・葬儀 (3)告別式 (4)出棺 (5)火葬
・一般的な葬式 /(1)(2)(3)(4)(5)
ある程度の人数の会葬者を呼ぶスタンダードなスタイル。通夜と告別式を2日にわたって執り行う。規模により異なるが、費用は130万円程度から。
・家族葬 /(1)(2)(4)(5)
家族や親族、ごく親しい知人など少人数で見送る形態。読経と遺族のお別れに絞ったもので、通夜を省略する場合もある。費用は70万~ 100万円程度。
・直葬 /(1)(4)(5)
納棺、出棺、火葬のみに絞ったもの。読経も祭壇もお別れの儀式もないので、厳密にいうと葬式の概念に当てはまらない。費用は15万~ 20万円程度。
・生前葬 /(3)の生前施行
本人が生前に告別式やお別れ会を行う新しいスタイルで、ここ最近注目されている。実際に亡くなった際の葬式は、遺族や近親者のみで行う。
※『遺族のための葬儀・法要・相続・供養』(二村祐輔監修/池田書店)をもとに作成
●日本葬祭アカデミー教務研究室代表・葬祭カウンセラー
二村祐輔さん(ふたむら・ゆうすけ)
葬儀コンサルティング、講演活動などを展開。テレビでも活躍。葬儀社に約18年間勤務し、2000件以上の葬儀にかかわる。『60歳からのエンディングノート入門 わたしの葬儀・法要・相続』(東京堂出版)など著書多数
※週刊朝日ムック『はじめての遺言・葬式・お墓』より