健康維持のためには、日常的に簡単な運動を取り入れることが必要だという。100歳まで寝たきりにならない体作り・筋力作りを提唱する医師・宮田重樹氏が、中高年向けのより抜きの運動を紹介する。

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 60代を過ぎて若いときと同じく元気! という人でも自然と衰える運動能があります。高齢者の体には、いくつかの特徴(問題点)があります。体幹と下肢の筋力が衰え、体幹関節の可動域が悪化し、バランス能力や瞬発力が低下します。さらに背中が曲がるなど姿勢が悪くなり、筋持久力が低下して疲れやすくなります。

 体を支える体幹の筋肉を維持するためには、まず筋力トレーニングが必須です。代表的なものが腹筋です。

 紹介するのは立ったままの腹筋で、おなかをひっこめる腹筋を鍛えます。息を吐ききったあと、さらに5~10回、フッフッフーと息を吐きます。これをすることで腹横筋(下腹に帯のように巻かれている筋肉)を鍛え、ポッコリおなかの改善にもつながります。

 階段の上り下りをしながらこの腹筋をすると、さらに効果が期待できます。寝ながらでもできます。寝ながら腹筋をするときは下腹部に両手を当ておなかに息を吸い込み、下腹部をひっこめながらゆっくり長く息を吐ききったあとに、肩を床から5~10センチほど持ち上げて、2秒間そのままの姿勢でいます。

 そもそも筋肉は、日常生活でかかっている負荷よりも少し大きな負荷がかかると、ミクロレベルで筋繊維が傷つきます。その損傷が、筋肉が本来持つ超回復機能を促し、傷ついた筋繊維をより太いものに修復します。「ややきついわ」と感じるレベルで行わないと、このメカニズムが働きません。

 誰でも年とともに体が固くなりますが、若いときとは固さが違います。若いときは筋肉が固いために体が固いことが多いのですが、高齢になると体幹の関節がこわばり固くなるのです。でも多くの人は体幹の可動域が悪くなっていることに気がつきません。物をとろうとして手を後ろに回す拍子などに、痛みや違和感を感じることがあるでしょう? 関節の動きが良くなれば、体が軽くなって動かしやすくなり、その結果、痛みもとれていきます。

※週刊朝日 2012年9月7日号

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