エムレ・モル(右)らに個人能力の差を見せつけられた浦和(写真:Getty Images)
エムレ・モル(右)らに個人能力の差を見せつけられた浦和(写真:Getty Images)
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 オフ明けのボルシア・ドルトムント(ドイツ)は新体制スタートから約1週間、しかも来日直後にイベントを経て、翌日にゲームを迎えるという明らかに不利な状況であったことを踏まえても、浦和にとっては非常に有意義な“ワールドチャレンジ”だった。

 浦和は7月15日、明治安田生命Jリーグワールドチャレンジで日本代表MF香川真司が所属する強豪ドルトムントに2−3で敗れた。

 ドルトムントは直前に先発予定だったウスマヌ・デンベレが体調不良で、アンドレ・シュルレに代わるアクシデントがあったが、左サイドバックのマルセル・シュメルツァーが「明らかに最初の試合より良くなった」と語るように、前半は4−1−4−1、後半は3−4−2−1というシステムを用いながら、チームがやるべきことを共有して随所に質の高いプレーを浦和に示した。

 対する浦和はJリーグでは現在8位と低迷する状況で、こういった親善試合を戦うのはチームにとって難しいシチュエーションと言えるが、それでも浦和は高いモチベーションで全体的にハイスタンダードな戦いをやり切った。興味深いのは交代が7人まで許される中、“世界仕様”とも見られるトライを行ったことだ。

 前半はドルトムントのポゼッションをコンパクトな守備ブロックで迎え撃ち、ボールを奪ってから縦に速い攻撃を狙う。そして後半になると高い位置からのプレッシャーやポゼッションの度合いを強め、浦和が普段Jリーグで志向している基本スタイルに近い戦い方にシフトした。

 前半の象徴的なシーンは5分、ラファエル・シルバが左サイドからドリブルを仕掛け、ペナルティエリアまで侵入したシーンだ。結果的にDFのマルク・バルトラに倒され、PKを獲得することもできなかったが、自陣でボールを奪ったところから速いパスをつないで相手の背後を突く狙いが見事に表れた。

 浦和陣内でボールを拾ったバルトラがピエール=エメリク・オバメヤンに長めのスルーパスを通そうとするが、森脇良太がインターセプト。そこから中盤の柏木陽介、阿部勇樹と左につなぎ、大外で受けた宇賀神友弥が同サイドの背後にボールを出す。そこに走り込んで受けたラファエルがゴール方向にドリブルで仕掛けたのだ。

 このシーンは、仮にラファエルがバルトラを突破した場合、そのままシュートに持ち込んでいた可能性が高い。また、ゴール前の中央には武藤雄樹、さらに外側に興梠慎三がフリーで走り込んでおり、手前には柏木という形で、カウンターでも攻撃に厚みが見られた。

 セットプレーから興梠のゴールで1−0とリードしてからも基本的にそうした構図が続いたが、ドルトムントも徐々にポゼッションを起点とした鋭い動き出しが増えた。特に33分にオバメヤンのポストプレーからシュルレが速いクロスを上げ、右からクリスティアン・プリシッチが飛び込んだシーンはわずかに合わなかったものの、このシーンでは浦和の守備対応を上回っていた。

 それでも浦和は、やや引き気味の守備を継続しながら、ボールを持てば、森脇などのサイドチェンジを有効に使って、サイドからのパスやクロスにFWが飛び出して合わせるプレーや、周囲がが連動して厚みを増す攻撃を繰り返しチャレンジし、Jリーグの時より短い攻撃時間の中でも単調に縦、裏を狙うわけではない浦和らしさが出ていた。

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