
前半戦最後の先発となった7月10日のブルワーズ戦は、残念ながら、ヤンキースの田中将大の今季ここまでを象徴するような投球になってしまった。
初回にトラビス・ショーに3ラン、2回にもスティーブン・ボグトにソロと、またしても2発を被弾。結局は4回1/3を6安打5失点で降板し、今季8敗目を喫した。前半7勝8敗、防御率5.47という成績は“エース”と呼ばれる立場の田中にとって不本意としか言いようがない。
「(持ち球の)質が上がってきている」
「自分がトライしているものが結果として出ている」
7回1失点で勝ち投手になった7月3日のブルージェイズ戦後、田中のコメントは復調への手応えが感じられた。ブルワーズ戦までの3戦はすべてクオリティスタートで、その間の防御率は1.29。向上途上に見えた直後の再びの乱調だけに、本人もフラストレーションを感じていることは想像に難くない。
もっとも、今季の田中の投球を見てきて、筆者は実は防御率などが示すほどに低調だとは思っていないというのも正直なところではある。
詳しい数字を見ても、特に空振り率はクリス・セール(レッドソックス)、マックス・シャーザー(ナショナルズ)、コリー・クルーバー(インディアンス)といったMLBを代表するエースたちに次ぐメジャー4位(14.7%)。奪三振率9.09も1年目以降では自己最高の数字だった。これらのスタッツは、田中が依然としてメジャーの強打者たちのバットを空を切らせるだけの球を持っていることを示している。
そんな中、問題になっているのが昨季.273から.317へと跳ね上がったBABIP(インプレー打率)と、すでに23本という被本塁打。HR/FB(本塁打とフライの比率)22.5%は、同僚マイケル・ピネダと並ぶメジャーワーストの高さ。つまり数多くの空振りを奪う一方で、バットに当てられた場合には高確率でヒット、ホームランになっているのだ。
この傾向を振り返り、今季の田中の登板を数多くチェックしてきたファンは思わず頷くのではないか。なかなかの出来だと思いながら見ていると、突然、失投をホームランにされてしまう。象徴的なのは4回で10奪三振を奪いながら、3本塁打で自責点5を許した6月17日のアスレチックス戦。2本の本塁打で2回までに4失点を与えた最新のブルワーズ戦でも印象は同じだった。