東京都議選の結果、政局の「潮目が変わった」と言われている。具体的に何が変わったのか、正直私にはよくわからない。しかし少なくとも政権を批判することに対する人々の受け止め方は、着実に変わっているように感じている。
7月9日に新宿で開催された「MARCH for TRUTH」というデモに対する反応をみて、「潮目が変わった」という実感を覚えた。
17時過ぎ、集合地点からほど近い都庁前駅A5出口を出ると、デモに参加する人が溢れかえっている。参加者の多さにまず驚いた。しかもプラカードひとつ見てみても、参加している人々はかなり多様だ。中には「こんな人たち」と書かれたプラカードを持っている人もいる。
これは都議選の最終日の7月1日、聴衆から「やめろ」「帰れ」とコールを浴びた安倍首相が発した「こんな人たちに負けるわけにはいかない」という発言に対する抗議でもある。
その映像を初めて見た時、私は正直言って、批判の矛先は「安倍やめろ」と声を発した人々に対して向くのではないかと思った。あるいは「非難しあっているのだから、どっちもどっちだ」といった論理に回収されるのが関の山ではないかと考えていた。そのため、「こんな人たち」発言の問題性を指摘する原稿を用意したほどだった。
しかし、そんな考えは杞憂に終わった。マスメディアの報道や、SNS上での反応を見ると、首相発言に対して批判的な意見が多くを占めていた。それどころか、自民党議員からも批判的な声が上がる始末だ。大学院の友人の反応も、「あの発言はありえないよね」といったものが多かった。いつもは政権に対してあまり否定的ではない人も含めて、そういう反応だったから、何だか拍子抜けしてしまった。
9日にデモ行進をしながら、さらなる変化を感じた。沿道の人々に目を向けてみると、デモ隊を見つめる人が数多く見受けられる。歩道橋の上をランニングしている人が、わざわざ足踏みをしながらこちらを見つめている。自転車に乗った通行人が、デモを見ていた人に「これ、すごいね」と話しかけている。通行人が立ち止まって携帯のカメラで写真や動画を撮っている。
どこか周囲の反応がいつもと違う気がした。デモ隊が近くを通れば、目を向けるくらいのことは当たり前かもしれない。しかし、これまでであれば、立ち止まってまで見物する人はこんなに多くなかったように思う。しかも意外なほどに迷惑そうな表情の人はあまり見当たらない。なぜこんなに好意的な雰囲気が漂っているのか、不思議で仕方なかった。