最終会見ではパッキャオ本人はそう語っており、実に13戦ぶりのノックアウト勝利に控えめながら意欲を見せている。実際に最近の試合でもダウンは頻繁に奪っており、経験不足のホーン相手ならフィニッシュまで持っていく可能性もありそうだ。そして、ここで好内容のファイトでアピールすることが、今後のさらなるビッグマネーファイトに繋がることも十分に考えられる。
「今戦はESPNで中継されるおかげで、米国でもこれまでパッキャオのファイトを見たことがなかった多くの人がホーン戦を見ることになる」
6月27日に行われた電話会見中、パッキャオが所属するトップランク社のボブ・アラム・プロモーターはそう述べていた。その言葉通り、近年のパッキャオの試合はプレミアケーブル局のHBOが課金制度のペイパーヴュー(PPV)で放送してきた。しかし、ホーン戦はより多くの人が手軽に視聴できるESPNでのプライムタイム生中継。460万件のPPV購買数を記録した2015年5月のメイウェザー戦を除けば、米国国内でこれまでで最も多くの視聴者を集めるパッキャオのファイトになると言われる。ESPNの莫大な視聴者の前で、全盛期を彷彿とさせるKOパフォーマンスを見せることの意味は計り知れない。
パッキャオが属するウエルター級には、WBA、WBC王者キース・サーマン、IBF王者エロール・スペンス・ジュニア(ともに米国)といったイキの良いタイトルホルダーたちがいる。また、一階級下のWBC、WBO世界スーパーライト級統一王者テレンス・クロフォード(米国)とフィリピンの英雄との新旧対決を望む声も後を絶たない。そして、パッキャオ本人は、8月に復帰戦を開催するメイウェザーとのリマッチを熱望していると言われる。そういったビッグファイト実現に向けて、ここで商品価値を回復させておくことができるか。
無名のホーンとのオーストラリアでのファイトは、38歳のパッキャオにとってこれまで以上に内容が問われる一戦になる。負けは論外、苦戦もダメ。ボクシングファンを再びエキサイトさせるべく、KO勝利がほとんど義務付けられた試合だと言っても大げさではないのだろう。(文・杉浦大介)