そこから自分でうまい具合にやり方を見つけたり、どっか会社に入ったり、ポジションを見つけたりして、給料をもらうわけですから。お金が絡むということは、おのおのの生活がかかってくるということで、学生時代のバイトとは違うんですよ。
僕がそれに気づいたのは20代の前半。バカみたいなことですけど、ベロベロで二日酔いでも会社行かないといけないのかと。学生の時なら休めたりするけど、社会に出るとそうはいかない。やっぱり約束してることはやらなきゃいけないし、己の立場と責任があるってことですよね。
そのころの僕はプータローみたいな生活でした。お笑いライブとかはたまに出ていましたけど、仕事なんか全然なくて、アルバイトは何でもやりましたよ。サービス業も飲食業も力仕事もガードマンも、デスクワーク的なこともやりました。それなのに「俺は芸人だ」っていう思いだけはあって、バイトはどこかいい加減な気持ちで、途中でやめちゃったりしてました。たくさんの人にご迷惑をおかけしたし、生活できなくなって借金して借金取りに追われまくって、いまの妻にもだいぶお金を借りてました。社会的立場はどんどん悪くなりますよね。芸人の仕事なんか何もしねーでサボりまくってるくせに、偉そうなこと言ってんじゃねえって今の俺なら言いますけど。当時は「芸人だから」って言葉で、社会の仕組みから逃げていただけですよね。
結果的にずっと芸人を続けてこられたから、当時はその気持ちを崩さなくてよかったと思うんですけど。ただ、多大なるご迷惑を不特定多数の人にかけました。
スイッチが入ったのは30歳ぐらい。「あれ、もしかしたら売れるかもしれない」って思ったときです。借金取りから逃げてきて、そのままライブに出てキレ芸ができた。そこから半年で小さなライブで優勝して、もっと上のクラスのライブで優勝して、っていうのが続て、3年ぐらいでテレビに出させてもらうようになった。