ともあれ、18のホールを巡る道のりが始まった。アンは全48組の48組目。最後発であるが、随行するギャラリーはスタート時点で50名前後を数えた。そのなかの1人、長年女子ゴルフを観戦してきたという50代男性は「なかなか珍しいこと」と驚く。「通常は実績が少ない選手ほど後ろの組になる傾向があるから、後発組はギャラリーが少ないんですよ。これもアン・シネさんの人気のなせる業かな」
ホールを巡りながら、ギャラリーのおじさまたちからアンのどこに魅力を感じているのか聞くことができた。
40代男性A氏は「ひたむきさがたまらない」と語る。「今年から日本でデビューしたわけだけど、日本の環境に馴染もうと努力してるよね。それにファンサービスを忘れない姿勢も偉い。声援に笑顔を向けてくれたりね。ただ、美人過ぎるのは不安。マスコミに過度に持ち上げられているけど、関心を抱いた人は純粋にプレーを見て欲しい」
また、50代男性B氏はこう述べた。「アン・シネさんのゴルフは『魅せるゴルフ』。ショットのときやボールを拾うときなど、仕草や姿勢の一つひとつが美しい。自分に注目が集まっていることがわかっていて、どう自分を見せたらいいか研究しているんでしょうね」
これらは女子ゴルフをよく観戦しているというおじさまの意見だが、意外なのは誰からも肉体の曲線やスカートの裾に類する話題が出なかったことだ。単純に白昼の公の場では話しづらい話題だというだけかもしれないが、そうした大人の姿勢が、ゴルフが「紳士のスポーツ」と呼ばれる一因なのだろうか。
もうひとつ興味深かったのが、アンに随行するギャラリーには今回初めてゴルフを観戦するという人が比較的多かったこと。そしてその多くが「たまたま」観戦することになったと口を揃えたことだ。
40代男性C氏は「たまたま友人にチケットを譲ってもらって、休日だったので来てみました」という。アンのファンなのかと尋ねると「いえ、たまたま見ているだけです」と少し気まずそう。取材中、合計21名から話を聞いたが、そのうち5名とほとんど同じやり取りがあった。男性ならば多くの人が経験あることと思われるが、例えば若かりし頃、レンタルビデオ店のセクシーな作品が並ぶコーナーで知人に出くわした際、「たまたま迷い込んじゃって」などと言い訳をしたことはないだろうか。記者はある。なぜかそれを思い起こさせる出来事だった。
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