ラグビー元日本代表選手が神宮外苑の再開発に「NO!」を突きつけた。日本ラグビーの歴史の象徴である秩父宮ラグビー場を取り壊す計画に異を唱え、反対の署名活動を始めたのは元神戸製鋼の平尾剛氏。声を上げた理由を本人に聞いた。
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──秩父宮ラグビー場の移転に反対の声が高まっています。
秩父宮ラグビー場は大阪の花園ラグビー場と並ぶ日本ラグビーの聖地です。秩父宮は戦後まもない1947年に建設されました。当時、関東ラグビー協会の香山蕃(しげる)理事長を中心に、ラガーマンたちが私財をなげうってつくった。まさに、日本のラグビーの歴史を象徴する場所です。
野球でたとえるなら、1924年に建設された甲子園球場です。甲子園は、改修を重ねて今でも野球の聖地として親しまれていますが、ラグビーファンにとっては、秩父宮がなくなることは甲子園が壊されることと同じなんです。
──移転計画はどこに問題点があるのでしょうか。
秩父宮は老朽化が進んでいて、私も大規模な改修は仕方ないかなと思っていました。それが、今年になってはじめて、収容人数が今の2万5千人から1万5千人に削減されると知って驚きました。
──1万人も減ってしまうんですか。
ラグビーワールドカップ日本大会の成功で、日本のラグビー人気は高まっています。日本代表の試合などでは今ですら収容人数が少なくてチケットが取れないことがあるのに、現在よりも4割も収容人数を減らす理由がわかりません。
移設計画では、音楽のライブやバスケットボールの試合、アイスショーまでできるようになると書かれています。
座席数を減らすのは、音楽のライブなどで必要な巨大なスクリーンをスタジアムに設置するためでしょう。ラグビーでは、巨大なスクリーンは必要不可欠というわけではありません。
──日本ラグビーフットボール協会は反対していないのでしょうか。
協会が神宮外苑の再開発について明確に意思表示していないことが大きいと思います。事実上認めてしまっている。
私は今、大学の教員をしていて、協会とは直接のつながりはありません。だから自由な発言ができます。しかし、現役の選手やコーチが、個々の立場で移転反対の声を上げることは難しい。