生来の人見知りで「緊張しい」だという人気ラジオDJの秀島史香さんには、20年の経験の中で培ったコミュニケーション術があります。最も大切なのは、いかに相手と自分にとって「いい空気をつくる」か。小さな心がけや習慣で「いい空気」は一瞬のうちにつくることができると、自著『いい空気を一瞬でつくる 誰とでも会話がはずむ42の法則』でも明かしています。もちろん、これまで出会った、魅力的な「空気づくりの達人」たちから学んだことも多くあるそうで、中でもその気遣いの一流さに惚れ惚れし、感動したというのが、槇原敬之さんでした。その時のエピソードを特別に紹介します。
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2013年の暮れにNHK BSプレミアムで、槇原敬之さんがホストの音楽バラエティー『マキハラといっしょ』の進行役を務めました。うれしいことに槇原さん本人のご指名だと聞き、二つ返事で「ぜひ!」と。以前にもラジオ番組にゲストで来ていただいた際、槇原さんのサービス精神と言葉選びのセンス、機転の良さには感激しましたが、その素顔に間近で迫れると思うと胸が高鳴りました。
ゲストは女優でアーティストの松たか子さんと作曲家の井上ヨシマサさん。槇原さんと松さんが子ども時代の音楽談議に花を咲かせ、スタジオライブではデュエットも披露されました。AKB48への楽曲提供でも知られる井上さんとは、ディープな音楽づくりの話に。さらに、槇原さんがアイルランドのティン・ホイッスルという楽器を紹介するコーナーもあり、60分間に盛りだくさんの内容となりました。
イメージは、深夜のラジオ番組。スタジオにラジオのDJブースを模したセットが組まれ、「ON AIR」のサインも再現。赤いランプがともると、ぐっと雰囲気も出ます。槇原さんがホストとして好きな音楽をどんどん紹介していくよ、という番組コンセプトに、ラジオの自由な雰囲気はぴったりでした。
ただ、実際にはやはりテレビですから、収録には入念な準備が必要です。
スタジオライブを行うために、いわゆる「テレビサイズ」と呼ばれる曲の長さに楽譜を起こし(オリジナルの楽曲より短くする)、CDとは違うアレンジを施します。収録とは別に練習日を設け、ミュージシャンたちと音合わせ。当日も何度もリハーサルを重ね、ボーカルの響き、楽器の鳴り方、音のバランスまで細かくチェックをするのです。