六角堂のへそ石
六角堂のへそ石
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大徳寺の高桐院
大徳寺の高桐院

 6月3日(土)から公開予定の映画「花戦さ」。舞台は、16世紀後半の京の都。六角堂にいる花僧たちが、時の権力者豊臣秀吉に、刃ではなく花で仇討ちをするストーリーだ。そこで、「花戦さ」にゆかりのある京都の名所はないか、『できる人の「京都」術』の著者でもある柏井壽氏に、きいてみた。

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 ゆかりの場所といえば、なんといっても舞台となった「六角堂」です。

 その「六角堂」ですが、794年に平安京に移るより200年以上も昔、聖徳太子が六角形のお堂を建立されたのはたしかなことと伝わっています。

ただ「六角堂」は正式寺名ではありません。正式には「紫雲山頂法寺」といいます。毎朝紫の雲がたなびく霊木を使ってお堂を建てたことに由来します。

 京都人は親しみを込めて「六角さん」と呼び、「六角通り」と通りの名前にもなっています。そして「六角堂」のシンボルとも言えるのが「ヘソ石」です。

 境内の中にある六角形の石で、真ん中に穴が開いています。日本人は、何かにつけ、ものの中心を「ヘソ」と言い表します。「ここが日本のヘソ」だとか「本州のヘソはこの辺り」などと。「ここが京都の中心だ」と聖徳太子が本当に仰ったのかどうかはさておき、六角堂の「ヘソ石」は京都の中心に当たるといわれています。

 都が平安京にうつる際、都市計画上、道の真ん中に建っていた「六角堂」は移動する必要がありました。そのとき六角堂のお堂はひとりでに数メートル動いたと伝わっています。

 そして、お堂が元あった場所を示すのがこの「ヘソ石」なのです。

 ゆかりの場所2つめは、「大徳寺」です。

 広い境内には20を超える塔頭がありますが、その多くは、ふだんは門を閉ざしていて、中の様子をうかがい知ることはできません。他の観光寺院と一線を画す姿勢は、ときに冷たく感じることもありますが、それゆえ今の格式と静寂を保ってきたとも言えます。

 見事な紅葉で知られる<高桐院>、「大徳寺」では最古の建築を持つ<龍源院>、キリシタン大名大友宗麟が建立した<瑞峯院>、書院の風雅な庭園を見どころとする<大仙院>。この4つの塔頭だけは常時公開しているので、必ず観ておきたいところです。

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