昨年25年ぶりのリーグ優勝を果たした広島。5月5日からの対阪神戦で三連敗を喫し首位の座を明け渡すこととなったが、前半戦は順調に勝ち星を重ねている。一昨年の前田健太のメジャー移籍、昨年の黒田博樹の引退と投手陣の柱が二年続けて退団し、またエースのジョンソンと抑えの中崎翔太を故障で欠いている現状を考えると大善戦と言えるだろう。
そんな広島のチーム作りの根幹となっているのが独自のドラフト戦略で、2007年に希望枠が撤廃されてから特に思い切りの良い上位指名が目立つ。まず過去10年のドラフトを振り返ってみると、第1回目の選択希望選手で抽選になったケースは外れの入札も含めて9回あるが、当たりくじを引き当てたのは13年の大瀬良大地だけ。くじ運に関しては決して恵まれているとはいえない。しかし抽選を外した年でもその後の指名で大きく方向転換をして成功している例が少なくないのだ。
代表的なのが07年と12年の指名だろう。07年は高校生投手ではナンバーワンの呼び声が高かった唐川侑己(ロッテ)を外すと、レベルの高い投手はいないと判断してチームカラーにマッチした安部友裕を指名。一軍定着に時間はかかったものの、今では内野の一角として欠かせない存在に成長している。12年も将来のエース候補として指名した森雄大(楽天)、その外れでは即戦力の期待をかけて増田達至(西武)と投手二人を外した後に野手に方向転換。高橋大樹、鈴木誠也と高校卒の野手二人を上位指名し、鈴木はいまやWBC日本代表にも名を連ねるまでとなった。狙っていた選手を外した場合は思い切って将来性に舵を切るというのが成功した例と言えるだろう。
もう一つ目立つのが思い切った2位指名だ。希望枠が撤廃されたことで1位指名では大物を狙うことが少なくないのは先述した抽選回数にも現れているが、2位指名では意外な選手を狙い撃ちしているケースが多い。その代表例が11年に2位指名された菊池涼介だろう。菊池の出身大学は東海地区大学野球連盟に所属している中京学院大学。大学日本代表候補の合宿には招集されていたものの、全国の舞台での経験はゼロ。同じ内野手では全国で最もレベルの高い東都大学リーグで四度のベストナインに輝いた鈴木大地(ロッテ)も指名することが可能だったが、広島は敢然と菊池を2位指名したのだ。ちなみに中京学院大はこの前年に池ノ内亮介が育成ドラフトで指名されているが、支配下の選手では菊池が初の指名である。このこともいかに冒険心に富んだ指名だったかが分かるだろう。菊池は球団の期待に応えて二年目からセカンドのレギュラーに定着。その後の活躍ぶりは言うまでもないだろう。