「一般的にクマが臆病というのは間違いないでしょう。しかし、クマは個体ごとの個性が大きく違うことも特徴。なかには人間を恐れずに接近してくるものもいる。だから、最善のクマ対策は『出会わないこと』なのです」
また、昨年はクマの出没が多発したが、今年は比較的少なくなると予想されている。大西研究員いわく、クマの出没件数はエサとなるブナの実が豊作か不作かで予測できるという。
「ブナの実は、豊作の翌年は凶作になります。2015年はブナの実が豊作だったことから、2016年は凶作が予想されました。そして、凶作の年にはクマの出没が増える傾向がわかっています。ブナが2年連続で凶作になるとは考えづらいので、今年のクマの出没数は比較的少なくなると予測できるのです」
たしかに年ごとのツキノワグマの有害駆除頭数を見ると、2010年、2012年、2014年、2016年は2500~3500頭、一方で2011年、2013年、2015年は約1000頭と、隔年で増加と減少を繰り返していることがわかる。しかし、油断はできない。
「クマの個体数自体は年々増加していると考えられています。1970年代に個体数の減少が懸念され、有害駆除および狩猟の禁止措置がとられたのですが、その結果、1990年代後半頃から人間との遭遇が相次ぐようになりました。また過疎化や高齢化による耕作放棄地の増加により、生息域が拡大していることもクマの被害が増えている背景のひとつです」
クマは“身近な動物”になりつつあるわけだ。
クマの出没は春先から増え始め、晩夏から初秋にむけてピークを迎える。とくに冬眠明けの春と冬眠するために栄養を蓄える秋は危険なシーズン。不測の事故を防ぐためにも、万全の心構えをしておきたい。(取材・文/dot.編集部・小神野真弘)