厚生労働省によれば、精神疾患により医療機関にかかっている患者数は近年、急増しているという。内訳はうつ病や統合失調症、認知症などさまざまだ。扱う疾患が幅広い「精神科医」とは、いったいどんな仕事の内容なのか。医学部志望生向けのアエラムック『AERA Premium 医者・医学部がわかる』では「診療科別仕事図鑑」として、現役の医師に「精神科医」の仕事内容を聞いた。
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精神科は、脳と心を扱う診療科だ。患者が、生まれた時からどのような生活をしていて、何に困っているのか、それはどのような病気に当てはまるか、病気でなくても生活の支援が可能か―と、じっくり病気と生活の両面をアセスメントしていく。このため、とりわけ初診には時間を割き、1時間近くかかることも珍しくない。
扱う代表的な疾患は、うつ病や躁うつ病といった気分障害、不安障害、統合失調症、発達障害、認知症などの精神障害から、アルコールなどの依存症であるが、疾患以外にも、企業や学校でのメンタルヘルス支援も行う。
少しもどかしく思えるのは、脳の中で起こっていることを、客観的にきっちりと捉えにくいことだ。最近は、MRIや光トポグラフィーという機器を使って脳の活動を可視化する検査も導入されつつあるが、あくまでも補助手段で、診察には問診が何よりも重要になる。
東京女子医科大学精神科講師の稲田健医師は、
「まず、患者さんとの関係性をうまく作り出せるかどうかをとても大事にしており、そこが精神科医の腕の見せどころでもあります」
と語り、こう続ける。
「様々な患者さんが来院しますが、それを『◯◯病ですね』と決めつけるような人は精神科には不向きだと思います。いろいろな可能性を考えられる人のほうがいいですね」
例えば、うつ症状を示す病気はいろいろなものがあり、背景は患者ごとに異なる。
精神科医を目指す後期研修医は、病棟そして外来で経験を積み、10年ぐらいかけて一人前の精神科医として育っていく。