若い世代を中心に、刀剣文化への関心が高まっている。パソコンやスマホで楽しめるゲーム「刀剣乱舞」の登場をきっかけに、3年目に入ったブームはどこへ向かうのか。週刊朝日MOOK『武将の末裔 伝家の宝刀』で、いわば「元祖刀剣女子」の渡辺妙子・佐野美術館館長(79)に、日本刀の魅力や鑑賞のポイントを聞いた。
──若い女性の刀剣への関心が高まり「刀剣女子」という言葉も生まれました。どんな変化がありましたか。
渡辺:2015年のある時期、刀剣展来館者の層が変わりました。きっかけはゲームだと知り、驚きました。「天下三名槍」の一つで当館寄託(個人蔵)の「大笹穂槍 銘 藤原正真(まさざね)作/号 蜻蛉(とんぼ)切」を見るために、5回来館した人もいました。
──美しいというのは、何となく分かります。
渡辺:美しい、きれい、これが好きという感情を大事に、素直に表現するのは、女性の方が得意なのかもしれません。ゲームやイラスト、アニメがきっかけでも、実物の刀剣に若者の感性を刺激する魅力があるからこそ、人気が続いているのでしょう。
──刀剣のどこをどう見ればいいのでしょうか。
渡辺:講演会や展示解説では、刀剣の見方を「1回見ただけでは分からない。最低20秒見続けないと見えてこない。少し離れたり角度を変えたり、ほかの作品を見た後にもう一度見たりするうちに、刃文(焼き刃の模様)や質感、色など、ほんの少しの微妙な違いがだんだん見えてくる」と説明します。
宝石、ダイヤモンドには、ここから見るのが一番よく光り輝いて見えるという「正面」があります。ところが、日本刀はさまざまな角度から鑑賞しなければ見えないものがある。美の尺度や鑑賞方法にも、西洋と日本の考え方の違いが表れています。
──ほんの少しですか。
渡辺:名刀と言われる一本の刀をじっと見ていると、刀の表面には微細な白く輝く光と、その光の奥に青く澄んだ鉄色が見えてきます。宵の星空のように、目を凝らせばだんだんと見えるものです。その白く輝く微細な光と青く澄んだ地鉄(じがね)には、50年間、毎年見ても見飽きない、人をひきつける魅力があります。