今回はひとまずチームには合流するとのことなので、試合には出られなくともミーティングなどの場では長谷部の力を借りることもできる。だが、今後長期離脱となれば、そうはいかない。長年、長谷部に頼ってきたツケとも言えるが、キャプテン長谷部の穴を埋めるのは簡単なことではないだろう。

 ケガが治れば、恐らく長谷部は日本代表に戻ってくる。それでもキャプテンは、そろそろ吉田麻也(サウサンプトン/イングランド)や山口といった下の年代の選手に任せてもいいのではないだろうか。実際、長谷部がキャプテンになったときも、中村俊輔(現ジュビロ磐田)、中澤佑二(横浜F・マリノス)、遠藤保仁(G大阪)ら、経験豊富な先輩選手がいるなかでの就任だった。そうした力強いサポート役がいてくれるなかでこそ、次のキャプテンは育つとも言えるはずだ。

 とはいえ、長谷部もすでに33歳。遅かれ早かれ、日本代表にとって「長谷部ロス」は乗り越えなければならない問題だった。そう考えれば、キャプテンの任命も含め、これが世代交代を図るいい機会というくらいに、ポジティブに受け止めたいところ。あまり悲観的に考えるべきではない。

 むしろ、実際の穴埋め作業以上に不安なのは、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督の精神状態である。

 この指揮官は、試合中の失点の場面などでもそうだが、精神的ショックが表に出やすいタイプの監督である。昨年9月のUAE戦で敗れたときも、浅野拓磨(シュトゥットガルト/ドイツ2部)の同点ゴールが幻となったことの恨み節ばかりを口にし、なかなか前向きな姿勢になれなかった。

 ただでさえ、自身が絶大な信頼を置く本田がミランで出場機会を失い、日本代表でも低調なパフォーマンスに終始するという頭の痛い問題の真っただ中。さらに悩みの種が増えれば、選手起用の判断などにも影響を及ぼしかねない。

 ハリルホジッチ監督には、自らが率いるチームの力を信頼し、自信を持って、この試練を乗り終えてもらいたいものである。(文・浅田真樹)