トランプは、その過激な言動ばかりが注目され、経済政策についても理論的な妥当性を欠くという印象をもたれることも多いが、現状に適合した合理的な政策を掲げているといえるようだ。

 また、安達氏によれば、長期停滞論、FTPL(物価の財政理論)といった経済学の比較的新しい動向ともマッチしており、トランポノミクスがきっかけで、世界の経済政策についての認識が変わる可能性もあるとしている。

 ただし、過度の楽観は禁物だ。

 トランプ当選後、大方の予想に反してアメリカマーケットのドル高株高が進み、世界的にいわゆる「トランプラリー(上昇相場)」が続いてきた。この動きを受けて、にわかにトランプ新大統領を肯定する論者が増えた。しかし、中には誤解による評価も多いという。

 よく目にするのが、トランポノミクスを「レーガノミクス(レーガン大統領の経済政策)の再来」とする指摘だ。確かに、レーガノミクスも減税と規制緩和で生産性を上昇させ、潜在成長率を押し上げようとする政策だった。

 しかし、世間一般にレーガノミクスというと「規制緩和を中心としたサプライサイド(供給側)改革」というイメージがあるためか、論者の中にはその側面を重視する向きが散見される。しかし、トランポノミクスをサプライサイド改革として評価するのは間違いであると、安達氏は指摘する。

 なぜなら、サプライサイド改革としてのレーガノミクスは歴史的にはほぼ失敗だったと結論づけられているからだ。アメリカのサプライサイド改革が開花するには、90年代後半のクリントン政権下の「IT(情報技術)革命」を待たねばならなかったし、冷戦構造の終焉という地政学的な偶然が重なったことが大きく作用していると考えられている。

 投資家に株式を勧めたい証券会社などは、個別株式のテーマにつながりやすいサプライサイド要因をポジティブ材料にしたいのかもしれないが、これには注意が必要である。

 では、そうした短期的な上昇相場を超えて、トランポノミクスが長期的な成果を出せるかどうかは何を判断材料にすればよいだろうか。

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