ボリビア・ウユニ塩湖で夕日を望む山口千貴さんと真理子さん。タキシードとウェディングドレスは現地で調達したという (C)山口千貴
ボリビア・ウユニ塩湖で夕日を望む山口千貴さんと真理子さん。タキシードとウェディングドレスは現地で調達したという (C)山口千貴
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旅行に持っていったガジェットの数々。現在手元にあるドローンは3台目。1台目はノルウェーで、2台目はナミビアで破損し、その都度新たに買い直した (C)山口千貴
旅行に持っていったガジェットの数々。現在手元にあるドローンは3台目。1台目はノルウェーで、2台目はナミビアで破損し、その都度新たに買い直した (C)山口千貴
ドローンで空撮したドバイのパーム・ジュメイラ。ヤシの木の形をした人口島で、ドローンを使うとその全貌がよくわかる (C)山口千貴
ドローンで空撮したドバイのパーム・ジュメイラ。ヤシの木の形をした人口島で、ドローンを使うとその全貌がよくわかる (C)山口千貴

「一生分の夫婦の話題づくりをしよう」

 そんな一言から、ある夫婦の壮大な旅路が始まった。夫の名は山口千貴(27)、妻の名は山口真理子(35)。2015年7月7日、関西国際空港から飛び立った2人は400日をかけて地球を一周、48か国を巡った。2人は自分たちのことを「ハネムーントラベラー」と呼ぶ。400日間の世界一周旅行は彼らにとっての新婚旅行だったのだ。

【ドローンから撮影した絶景はこちら】

 新婚旅行で世界一周というのもユニークだが、彼らの旅にはもうひとつ独特な試みがあった。行く先々でドローンを飛ばし、世界各地の名所の空撮映像をSNSで公開していたのだ。これをイギリスの国営テレビ局BBCが報じたことによって、2人はいちやく有名人になった。千貴さんがネット上にアップした一連の動画の合計再生数はいまや1000万回を超えるという。

 400日間もの旅路は夫婦に何をもたらしたのか、そして夫婦を旅にいざなったものは何だったのか。2016年8月に日本に戻り、新たな生活を営み始めた2人に話を聞いた。

●2人が世界一周にかけた想い

 世界一周を提案したのは夫の千貴さん。当時の心境を尋ねるとこんな回答が返ってきた。

「2人が老後まで語り合えるような、一生分の思い出をつくりたかった。僕は、学生の頃からバックパックを背負って旅をするのが好きだったんです。ユーラシア大陸を横断したり、アフリカ大陸を縦断したり。2人で同じような体験ができたらいいな、という強い思いがありました」

 400日間もの世界旅行は、言うまでもなく大事業だ。お金を貯める必要がある。人によっては仕事を辞める必要もあるだろう。また、日本の社会でそれほど長い期間、キャリアや実生活に穴を空けてしまうことは、将来の不安にもつながるはずだ。

 だが、千貴さんの境遇はある意味で恵まれていた。ネット回線とPCさえあればどこでも仕事ができるプログラマーという職業柄、退職することなく旅行をスタートでき、その間もキャリアを継続できた。会社の理解があったことも大きい。しかし、スイミングスクールに勤めていた真理子さんは退職をしている。その時、何を思ったのか。

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