インフルエンザのため、全日本フィギュアスケート選手権を棄権した羽生結弦(22)。連覇は「4」で途絶えたが、四大陸選手権、世界選手権と、大一番はまだ2戦控えている。
今季、羽生とコーチであるブライアン・オーサーの師弟関係がより深まったという。ISU・グランプリシリーズ2戦目のNHK杯で、羽生が今季男子初の総合300点台をマークした後、シリーズ1戦目が「ターニングポイントだった」とオーサーは振り返った。
12月に55歳の誕生日を迎えたカナダ人のオーサーは、選手、プロスケーター、コーチ、その全てで大成している。競技者としては3アクセルに卓越し、五輪2大会で銀メダルに輝くなど、80年代の男子シングルで一時代を築いた。またプロとしては、20年間ショーマンシップを張り続けた。
コーチとしては、韓国のキム・ヨナ氏と羽生に五輪金メダルをもたらした。また世界選手権男子は2014年の羽生から2015年、2016年のスペインのハビエル・フェルナンデス(25)まで教え子が制覇し、オーサーの3連覇中とも言える。フィギュアスケート界の重鎮だが、本人はキューピー顔の見た目通り、陽気でノリも良く親しみやすい。感性が若く、10代から20代半ばの選手とも通じ合えている印象だ。
羽生とオーサーのタッグは2012年春からとなる。羽生は、技術面では4回転ジャンプの指導を求めてオーサーに師事した。オーサーの指導を受けるフェルナンデスが、当時2種類の4回転ジャンプの精度で抜きん出ていたからだ。だがオーサーは、羽生のスケート人生を長い目で見据え、基礎となるスケーティングを強化し、スケーターとしての羽生の「土台(foundation)」をつくることも目指していた。
ジャンプとスケーティング。両者の当初からのベクトルの違いが、5シーズン目にして、今季シリーズ1戦目で方向性のズレとなったのだろう。今季から取り組む新技の4回転に苦戦していた羽生は、シリーズ1戦目までは「ジャンプのためのスケーティング」をしていたという。ジャンプに気を奪われている羽生に、オーサーはスケーティングを含めた演技全体に専心することを望んだ。2人は話し合いの場を設け、羽生は、演技の完成にはジャンプの成功も必要と説いた。