2017年は干支の10番目、酉(とり)年です。
干支とは、「甲、乙、丙」ではじまる「十干」という暦と、ご存じ「子、丑(うし)、寅」ではじまる十二支という暦を組み合わせたもの。「干」と「支」とで干支なんですね。
この干支、古代中国から伝わってきたといわれていますが、3000年以上前の殷の時代にはすでに使われていたそうです。日本に渡ってきたのも非常に古く、弥生時代や古墳時代の地層から出土した鏡などに干支が刻まれています。
この干支に動物をあてはめるようになったのは紀元前4~2世紀あたりの中国でのこと。中央で使われていた暦を、辺境の民族にも普及させ、王朝の威光を示すために、それぞれの干支の音の響きに近い、身近な動物を当てていきました(伝説上の動物「龍」も混じっていますが……)。
この考えもまた日本に入ってきます。そして干支は暦だけでなく時間や方位や日づけを表す、生活の基盤として定着していったのです。
そんな干支のうち「酉」に当てられた動物は鶏。ニワトリです。月は陰暦の8月。時刻は午後5時から7時あたり。方角は西。季節は秋。
鶏は夜明けを知らせる鳴き声から、中国では吉兆をもたらす動物です。「鶏」と「吉」が同じ発音であることも、縁起を担ぐ中国人にとっては好ましいようです。
日本でも鶏は、新たな時代を開く吉祥のシンボル。それは日本神話でも最も有名な一節のことです。太陽神でもある天照大御神が、天岩戸という洞窟に閉じこもり、姿を隠してしまうと、世は闇に覆われました。現代社会のニートを連想させる、日本初の引きこもりであります。
ほかの神々はなんとか天照大御神の気を引いて、社会復帰をさせようと、あの手この手で誘い出そうとします。決定打となったのはアマノウズメノミコトによるダンスでしたが、それだけでなく、闇夜に鳴き声を上げ来るべき夜明けを知らせるという「常世の長鳴鶏」を一緒に鳴かせたところ、興味を持った天照大御神が気まずそうに岩戸から出てきて、世界には光が戻ったともいわれています。