今季序盤から全日本選手権にかけては、ソチ五輪フリー前の状況を想わせた。絶体絶命が浅田を呼び覚ますのか。ソチ五輪のようには結果が伴わなかったが、3アクセル計2本ともうひとつの大技3フリップ+3ループに挑戦した。フリーの3アクセルは「なにがなんでも回る」と意気込み、2回転半の判定で転倒になったが力の限りを尽くした。

 このジャンプ構成が完成すれば、ロシアの世界女王エフゲニア・メドベージェワ(17)や全日本3連覇を果たした宮原知子(18)ら女子上位陣を、ジャンプの得点で上回る。今大会の浅田の“勇猛果敢”には、全日本に集ったコーチ陣も魅せられていた。本人は「なぜこの全日本で3アクセルを入れようと思ったのか、自分でも分からない」といつもの穏やかな笑顔をたたえた。

 フリー演技後、浅田は「応援に演技で応えられなかったことが悔しい」と言葉を結んだ。しかしその勇猛果敢な挑戦は、客席にもテレビの向こう側にも伝わったはずだ。映像の世紀は、アスリートを千両役者にした。浅田が一直線に2018年2月の平昌五輪に向かう、その一瞬一瞬を私達は共にすることが出来る。浅田の雄姿をいま、胸を熱くして見守ってほしい。(文=Pigeon Post ピジョンポスト 島津愛子)