その繊細に描かれる登場人物たちのいとおしさは、海野つなみによる同名の漫画原作と、これまでも原作ものの優れたドラマ脚本を手がけてきた野木亜紀子の手際によるところが大きい。
そして、物語の外側からこのドラマの盛り上がりを加速させたのが、毎回エンディングに流れる、星野源による主題歌「恋」にのせたキャストたちのダンスパート、「恋ダンス」の広がりだった。
動画共有サイトやSNSを意識的に活用しての拡散によって、『逃げ恥』の世界観は急速に共有された。「恋ダンス」を踊る登場人物たちはどこまでもかわいく、星野源と新垣結衣のキャラクターとしてのキュートさもここで最大限にはじける。そしてまた、この登場人物たちはここで単にキュートなだけではない。他者との関わり方に繊細であろうとするこの物語を生きる人々である。だからこそ、エンディングの「恋ダンス」の陽性の楽しさには、見かけのかわいさ以上の奥行きが生まれているのだ。
そして、ここまで書いてきたように、この登場人物たちの営みは、私たちにとって「人ごと」ではない社会の空気とともにある。だからこそ『逃げ恥』は、これほどに見る者の共鳴を呼ぶ作品になったのだ。(ライター・香月孝史)