「逃げ恥ブーム」は社会現象になった(c)TBS
「逃げ恥ブーム」は社会現象になった(c)TBS
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 12月20日、ついに最終回を迎えたTBS系ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』(以下、『逃げ恥』)。最終回の平均視聴率はシリーズ最高の20.8%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を記録し、TBS火曜ドラマ枠の歴代最高視聴率を達成した。

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 まさに国民的人気を博したと評しても過言ではない『逃げ恥』だが、その魅力は何だったのだろう。真っ先に挙げられるのは主演を務める星野源と新垣結衣のふたりの「キュートさ」だ。けれど、もうひとつ無視できない要素がある。

 それが、ストーリーを通して描かれる「他者との関わり方」、そして「他者へ向けるイメージ」についての繊細な視線だ。

●『逃げ恥』が提示した「旧来的な価値観」に対する新たな視点

 『逃げ恥』は恋愛経験がない津崎平匡(星野)と、大学院を出たが、派遣切りにあった森山みくり(新垣)が契約結婚をして、夫婦の役割を演じる中で、互いの距離感が変化していくラブコメディーとして広い支持を得た。

 平匡が雇用主、みくりが従業員となって雇用関係を結ぶという、ユニークな婚姻の形においてポイントとなるのは、二人の「偽装」結婚から生まれるおかしみや、雇用という形式的な関係から次第に漏れ出てしまう、お互いの感情の高まりである。

 この構造を言い換えると、社会が抱え込んでいる旧来的な価値観をどのように見つめ直せるかという論点を、ラブコメディーの中でごく自然に提起・検討するという行いにほかならない。契約結婚という関係は当初、不自然でぎこちないものとして描かれる。けれども、次第に伝わってくるのは、平匡とみくりの関係性から生まれるやりとりは、私たちをとりまく結婚観、仕事観を静かに問い返すものでもあるということだ。

 第10話、平匡とみくりが晴れて本当の恋人関係になったのち、二人の籍を入れるにあたって平匡は、みくりに「給与」として渡していた金額を貯蓄に回すことを提案する。

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