今夏、1カ月という長い夏休みをとり、注目を集めた歌舞伎俳優・市川海老蔵。闘病中の妻、麻央さんのためという報道も出たが、実際には少し異なるという。『アエラスタイルマガジン 33号』(朝日新聞出版)で語った、歌舞伎、ファッション、家族……。その一部を紹介する。
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スーツ姿から白いTシャツと短パンという普段のいでたちに素早く着替えて座ると、少し携帯電話をいじり、さ、どうぞ、とばかりに向き合う。スタジオ入りする姿、撮影時、着替えとひとつひとつの所作がとにかく早い。あたかも1分1秒を惜しんでいるかのようで、それが身体から発せられる「圧」となって伝わってくる。
それにしても、なぜTシャツ、短パン、サンダルなのだろう。
「これ以外、着ないです。たぶん3枚3000円ぐらいのTシャツ。どこへ行っても、どんな偉い人と会っても、だいたいこれだから、どん引きされる。舞台の上で着飾っているし、こういう撮影とかでおしゃれさせてもらうんで、普段の格好はもういいんですよ」
市川海老蔵のファッション論は、こうだ。
「歌舞伎の衣裳というのは、やっぱり、どんなファッションより奇抜なんです。足で引っぱりながら、ぶっとくて重い帯を3周させたりして結ぶ。色みもハイカラですし。衣裳というのは演じるうえでは非常に力になっている部分ですよね。僕のなかでは、はおっていく、着飾っていくということは、色をまとう、ということだと思う。人間って、色をまとい、それがどういうふうに自分に影響するかが一番重要だと思うんですよ。日本の男性のスーツは、比較的地味じゃないですか。女性の洋服のほうが派手でしょ。もっと日本人の男性には派手な色を着てほしいと思います。色で自分のポテンシャルアップできる、自分にとって『上げる色』ってあるはずなんですよ。赤だったり、黄色だったり。周りの誰がなんと言おうと、そういうのを着ちゃえばいいんです」
では、海老蔵さんにとって、その上げる色とは?と尋ねると、「僕、ない」と即答した。
「自分自身がどちらかというと色出している派なんですよ。だから、僕はシンプルが一番、それで結局色みが出ていることになるんです。変なふうに赤を着たりすると、強すぎちゃって」