クラウドサービスの様々な活用法(『シリコンバレー発 アルゴリズム革命の衝撃』より)
クラウドサービスの様々な活用法(『シリコンバレー発 アルゴリズム革命の衝撃』より)
アルゴリズムによる「活動」の変貌(『シリコンバレー発 アルゴリズム革命の衝撃』より)
アルゴリズムによる「活動」の変貌(『シリコンバレー発 アルゴリズム革命の衝撃』より)

 9月28日、人工知能(AI)開発で世界をリードするFacebook、Google(傘下のDeepMindを含む)、Microsoft、Amazon、IBMが非営利団体「Partnership on AI」を立ち上げ、関連企業に参加を呼びかけた。AIが人間の仕事を奪うのではないか、人間にとって危険な存在ではないかと危惧する声に、業界のリーディングカンパニーとして応えていこうとするものだ。

 AIを筆頭に、フィンテックやIoT(Internet of Things. もののインターネット)、ビッグデータなど、米国発の新しいテクノロジーの潮流が世界を席巻している。その背後には共通した現象が隠れているという。『シリコンバレー発 アルゴリズム革命の衝撃』(朝日新聞出版)を上梓したばかりのスタンフォード大学の櫛田健児研究員に話を聞いた。

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「情報をストックしたり、分析したり、シミュレートしたりする能力は、コンピューターが登場して以来、飛躍的に増大してきました。さらにインターネットの普及によって、ストックされる情報の量が倍々ゲームで増えています。しかも、ただ増えただけではなく、それを保存するコストも、処理するコストも劇的に安くなった。今では、わざわざ自前でサーバを用意しなくても、AWS(アマゾン・ウェブ・サービス)のような外部リソースを使えば、誰でも安価に、スピーディーに、やりたいことが実現できます」

 それを可能にしたのがクラウド・コンピューティングだ。クラウド・コンピューティングによって、コンピューターの処理能力が希少なリソースからほぼ無尽蔵に使える豊富なリソースになったことが、テクノロジーまわりの風景を一変させた。「クラウド(雲)上にデータを置いておけば、どこからでもアクセスできて便利」というのは、クラウド・コンピューティングの一面にすぎない。

「クラウド・コンピューティングを支えるのは、GoogleやAmazon、Microsoftなど、一部の限られた巨人たちだけが持つ巨大なデータセンター群です。それによって見かけ上、上限がなくなったITリソースを、『ものづくり』の分野に向けるとIoTになり、『情報収集』や『情報分析』に向けるとビッグデータとなる。『ファイナンス』に向けるとフィンテック、『創薬』や『医療』に向けるとバイオテック、『学習』に向けると人工知能となるのです」

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