9月の5度の先発機会中、4戦でクオリティ・スタート。20日のブルージェイズ戦こそ4回途中で5失点と打ち込まれたが、他の全ゲームでチームに勝利のチャンスを供給した。この月の、29回1/3を投げて22奪三振、8四球という安定した内容は胸を張って良いものだろう。

 「入団時の紆余曲折を考えれば、マリナーズが彼を安価で獲得できたことはほとんど“スティール”だった。ラッキーだったと言って良いでしょう」

 シアトルのラジオ局のレポーターとして長くマリナーズの取材を続けてきたシャノン・ドレイヤー記者は、岩隈のことを2014年にそう評していた。そして、同じ形容は2016年にも当てはまるのではないか。

 今季はすでに150イニング以上を投げ、250万ドルのインセンティブをゲット。さらに162イニングも突破したため、来季のオプションがピックアップされることも確定した。昨オフの低評価のあと、自身の力でそれらを勝ち取ったのだから、余計に意味があるように思えてくる。

 まだ実績に見合った注目度を得ているとは言い難い。それでも、すべてを考慮すれば、サイ・ヤング賞候補になった2013年、15勝をマークした2014年に続き、岩隈は今季も“密かに”ハイレベルのシーズンを過ごしていると言って良いのだろう。(文・杉浦大介)