現地8月29日、シーズン最後のグランドスラム、全米オープンテニスがニューヨークで開幕する。日本の錦織圭は、この大会で2年前に準優勝。悲願のグランドスラム制覇を目指し、大会2日目にベンジャミン・ベッカーとの初戦に臨む。
錦織圭は、ドローが決まった時に確認するのは初戦の対戦相手のみで、そこから先は見ないのだという。
それは多くの選手が言うことで、不確定な先々のことに捉われたくないというのは、ほとんどの選手たちが望むメンタリティだ。だがそうは言っても情報を遮断するのは難しく、世界ランキング2位のアンディ・マリーは「知りたくなくても、すぐに君たち(メディア)が教えてくれるから」とシニカルに笑い、また最近では「ツイッターで知ってしまう」という選手も多い。一方で同1位のノバク・ジョコビッチは、「基本的には次の試合のみに集中するが、そうは言ってもやはりドロー全体に目を通す」と言っており、全体像を把握しておきたいタイプのようだ。
ところが錦織は、本当に先々の対戦相手を知らないことが多い。会見で「ドローは言わないでください」と笑いながら取材陣に釘をさすこともあるし、勝利後の会見で次の対戦相手を聞かされ「えっ、また彼と当たるんですか?」と驚くこともあるほどだ。目的地点からの逆算ではなく、一歩ずつ進んで行けば目指す彼方まで辿り着けるとする彼の姿勢は、一つのトーナメントのみならず、初めてラケットを手にした少年の日から今に至るまで変わらぬロジックである。
実際に今回の全米オープンのドローを見ても、錦織が先々で当たる相手が誰になるかは予測がつきにくい。初戦でベッカーに勝利すれば、2回戦で当たるのはカレン・カチャノフとトマス・ファビアノという、予選突破者対決の勝者。その先となると、シード順で行けば3回戦でフィリップ・コールシュライバー、4回戦でダビド・ゴフィンということになるが、ゴフィンの山には、この7月以降で2大会に優勝するなど、15勝4敗と絶好調のイボ・カロビッチもいる。