復刻プロジェクトによって再び日の目を見たガトーひふみのアップルパイ(由乃由提供)
復刻プロジェクトによって再び日の目を見たガトーひふみのアップルパイ(由乃由提供)
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熟練職人が、若手へ秘伝のレシピを教えてアップルパイが完成した(由乃由提供)
熟練職人が、若手へ秘伝のレシピを教えてアップルパイが完成した(由乃由提供)

 酸味が強く、香りが良いりんご「紅玉」を使い、外はパリパリ、中はふんわりと焼き上げたアップルパイ。明治時代にパン屋として創業し、2014年、後継者が見つからずに閉店した京都・伏見の洋菓子店「ガトーひふみ」の看板商品が、16年6月、インターネット通販で復活した。

 同店の菓子職人が戦後、アメリカから持ち込まれたレシピを改良して完成させたアップルパイは地域の人々に愛され、数千人の熱烈なファンがいたという話もある。閉店により、一度はその味が失われたが、「熟練の職人が作り上げた“地域のお宝”を受け継ぎたい」という若手職人らの「復刻プロジェクト」により、再び日の目を見たのだ。

 全国的には知られていなくとも、子ども時代や若かりし頃に食べて忘れられず、「もう一度食べられたらなあ」と思うローカル食品は意外と多いもの。そんな、それぞれの地域で愛されてきた名産品や逸品が、いま、少子高齢化による後継者不足などにより失われつつあるという。

 その事態を重く見たのが、京都市の食品卸会社、谷商店やその取引先などで働く若手職人だ。谷商店の三代目社長、都築建吾さん(38)は、日々の仕事の中で、後継者不足でやむなく廃業する、または廃業を検討している伝統のある漬物屋や和菓子屋などと接してきた。

「(前述のお店は)どこも長く続けてきて看板商品があるお店ばかり。楽しみにしているお客さまがいるのになくなってしまう現状に歯止めをかけたかった」(都築さん) 別の取引先には、アイデアや技術を求める若手職人がいた。2、3年前から、「地域に根付いて活動してきた熟練職人の努力の結晶であるレシピを若手職人に引き継ぐことはできないか」と考えていたのが、プロジェクトの始まりだ。

 15 年に入り 、子会社の愛京家倶楽部(京都市)のブランド「由乃由」(ゆのゆ)で、本格的にプロジェクトをスタートさせた。その第一弾が、ガトーひふみのアップルパイなのだ。

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