しかし、2013年に行われた川崎市長選挙では、完全給食の実施を公約に掲げた福田紀彦候補(現市長)が自民・民主・公明3党の推薦を受けた候補を破って当選。これをうけて川崎市では、昨年2015年末から一部の中学校で給食の試行を始めるなど、今後は全校で完全給食を行う方針に転換している。
取り残された横浜市は、「家庭弁当には良い面があり、家庭からの要望も多い」などとして、今も完全給食の実施には否定的な立場を崩していない。全国最大となる373万(2016年6月1日現在)の人口を抱える巨大自治体だけに、中学校給食の実施には多額の予算が必要となることが背景にあるとみられる。
近年、横浜市は保育所の待機児童対策に注力し続けた結果、「待機児童ゼロ」を達成して大々的にアピールしたまではよかったが、これが子育て世代の潜在ニーズを呼び起こし、現在では保育所を建てても建てても足りない状況。「今は子育て関連にこれ以上のお金をかけられない」(市関係者)との本音も聞こえてくる。
そこでひねり出した案が、中学校「給食」ではなく「昼食」の充実だった。共働き世帯の増加により、家庭弁当が負担となっている世帯が多いのは横浜市も同じ。そこで、多額の予算を必要とする完全給食ではなく、市が主導する「安価な昼食」を選択肢として用意するという案を示した。
▼栄養バランスに配慮した1食360円の「ハマ弁」
今年(2016年)7月から横浜市の一部中学校で先行実施する昼食は、「栄養バランスのとれた温もりのある昼食」として、公募で「ハマ弁」というネーミングを決めるなど独自性を打ち出す。専用のホームページも立ち上げ、スマートフォンで注文ができるようにするなど、市は横浜ならではの中学校“昼食”として力を注ぐ。