安泰寺を訪れる修行者のうち、日本人には成長するまでに手間がかかるトマト系、西洋人は他の野菜の場所にもつるを伸ばして大きくなるカボチャ系が多いという。トマト系は「言うことは聞くが、自己表現が苦手」、カボチャ系は「積極的に自己主張するが、人の言うことは聞かない」そうだ。

 どちらが良いというわけではない。ネルケさんの理想は、ビニールハウスの天井から垂らした1本のひもに沿って真っすぐと伸びていくキュウリ系。「師匠の教えを確実につかんで、自分の力で成長する」人材を育てることだ。

 とはいえ、ドイツでも最近は、頭上を旋回するヘリコプターのように子どもに寄り添う「ヘリコプター・ペアレント」が問題となっているという。仏教には、相互に対立し、矛盾する二つの概念のどちらにも偏らない「中道」という教えがある。「子育てでも『中道』が大事。親は子どもにかかわりながら、自由も与えてあげる」とネルケさんは言う。

 子育てでも「ほどほど」が大切だということか。だがネルケさんも、かまってほしい子どもに「お父さんはパソコンの画面ばっかり眺めている」と言われると、「自分は仕事をしているつもりだが、相手はそう取っていないのか」とハッとするという。さじ加減は難しい。

 3歳の娘を育てている筆者は最近、離れて暮らす母親にしみじみと「子育てに終わりはないねえ」と言われてしまった。実はまだ育てられていたとは。できればトマトでもカボチャでもなくキュウリのように育ち、また育てていきたいものだ。

(ライター・南文枝)