兵庫県北部、新温泉町の山奥にある禅寺、安泰寺の堂頭(住職)を務めるドイツ人、ネルケ無方(むほう)さん(48)。中学1年の長女、小学6年の長男、こども園に通う4歳の次男、3人の子どもがいるネルケさんの子育ての悩みは? そして日本の子どもを取り巻く環境は、ドイツ人僧侶の目にどう映っているのだろうか。
子どもが生まれてから、ネルケさんは「修行と家庭の両立」に悩んでいるという。ネルケさんと妻子は、雪が深くなる12月末から3月の間を除き、お寺で一緒に生活する。安泰寺には現在、日本やアメリカ、イギリス、中国、ベトナムなどから来た国際色豊かな15人が修行している。禅寺は衣食住を共にする集団生活。彼らの指導もあるので、なかなか家族との時間が取りにくいのだ。
朝は午前3時45分に起床し、弟子たちと2時間座禅をする。その後、妻子との居住スペースに戻ると、子どもたちは学校に行く時間なのでバス停まで車で送る。夜も午後6時から8時までは座禅。一緒に暮らしていても顔を合わすことがほとんどない。
なんとか改善しようと、現在、夕食は家族ととり、夜の座禅を休む などして子どもたちとの時間を増やしているが、長女は反抗期なのか、声をかけても「ほっといて」とうるさがられ、ちょっと寂しい。「弟子たちと家族、どちらかを犠牲にしなければいけない。難しい」と頭を悩ませる。
そんなネルケさんだが、日本で子育てをしていると、ドイツとの違いに驚くことも多い。その一つが、「日本の家庭では、子どもをとても大事にすることだ」という。ネルケさんによると、ドイツの家庭は父親が支配する。子どもよりも親が優先されることが多く、親が家の中で一番条件の良い部屋を使い、子ども部屋は隅っこにあるそうだ。