しかも昨年は、前年に賞金王となった小田孔明が、世界ランク50位に入っていなかったため招待状を受け取ることができず、遂にはオーガスタの地を踏めない事態に。日本ツアー賞金王に出場権があるわけではないから、当時ランク50位以下の小田が招待されなかったことは仕方ないのだが、31年ぶりに「慣例」がなくなったことで日本のゴルフ界に衝撃が走った。国内ツアーもここまで落ちたかと―。
そんな暗い空気を一掃してくれたのが松山だった。昨年のマスターズでは、4度目のチャレンジで日本人選手歴代最少ストロークの通算11アンダーを記録し、自身メジャー最高の5位フィニッシュ。そして迎えた今年は、最終日に最終組の一つ前でプレーし、メジャーでの真の優勝争いを演じてくれた。ベストコンディションではない中でもメジャーで優勝を争い、トップ10入りするなんて全く頼もしい限り。本人が「思ったより良くない状態でここまできたのは自信になった」と言うが、本来の調子でプレーしていたらどうなるのか?なんてことを考えると、メジャー優勝は「すぐそばにあるもの」になったように思える。
そういった意味で、松山は日本人的メジャー観戦のメンタリティーに変革をもたらしたのではないか?これまでは、日本人選手のメジャー予選通過にホッと胸を撫で下ろし、ムービングデーで耐えることに安堵し、最終日はベスト10入りか“日本人初”や“日本人最高”を望む。それが優勝であることに越したことはないが、実際は奇跡を願っていたのが現実だった。もちろんこれまでだって日本人プロを応援してきたし、期待もしてきた。しかし松山に対しては混じりっ気なく「勝てる!」と思えるのだ。