1995年に起こった阪神淡路大震災。家の倒壊による被害が大きかったこの地震で、家の下敷きになった多くの人を助けたのは家族、そしてご近所さんだったということをご存じだろうか。
誰が、どこに何人住んでいるか知っている。地域コミュニティーは災害時にとても有効なのである。
今、川崎市高津区久本で、通常、地域コミュニティーから隔絶していることが多い大規模マンション3つが連携し、地区に新しい“ご近所さん”が生まれようとしている。
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東急田園都市線溝の口駅からほど近い久本地区は、かつて工場や研究所が立ち並ぶ地域だった。30年ほど前から住宅地として開発が進み、現在は大規模なタワーマンションはじめ、多くのマンション、一戸建てが軒を連ねている。
2016年2月11日(木)、タワーマンション「タワー&パークス」(以下タワー)の公開緑地である「みどりの大広場」に餅つきを楽しむ声が響いた。周囲にはつきたて餅や芋煮を振る舞うブースまで出ている。「本来この緑地では飲食できないのですが、災害時には炊き出しなどがここで行われるだろうことを予測して、その訓練にもなるからと管理組合と話し合い、許可を得ての開催となりました」と話すのは、タワーの自治会会長、片平宏司さんである。夕方までに600人もの人が訪れたこのイベントは、同じ久本地区にある「メイフェアパークス」(以下、メイフェア)、「パークシティ溝の口」(以下、パーク)の3マンションが共同で行った初めての連携事業である。パークは築33年1103戸、メイフェアは築15年547戸、そしてタワーは築9年648戸。いずれも500以上の世帯を抱える大規模マンションだ。
3つのタワーマンションの連携のきっかけを作ったパークの住民、山本美賢さんに話を聞くと、マンション間の連携に至る以前にまず取り組んだのは、自分たちのマンション内コミュニティーの活性化だったという。
「管理組合の理事だった時(2011年)に、自分たちのマンションには今どんな世代の人がどれくらい住んでいるのか全戸アンケートを行いました。そうしたら60歳以上の世帯が全体の約60%もあるという現状が浮かび上がったのです」。