平安神宮の節分祭 こちらの鬼は肩衣が虎模様
平安神宮の節分祭 こちらの鬼は肩衣が虎模様
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 携帯電話auのテレビCMが人気だと聞いてなんだかうれしい。桃太郎と鬼が仲良しだ、という設定や、イジけ気味の金太郎が、お噺ではのちに大出世をする人物だ、というのをわれわれが知っているだけに嫌味がない。

 ところで、「鬼」を和英辞典で引くと「悪魔」「悪霊」と同単語になってしまう。ただ私は、アジア人にとっての「鬼」は西欧のブギーマンやトロールのような妖怪(妖精)とは違うし、悪魔ともまったく違う存在と考えている。

●「鬼」は外、「福」は内

 2月3日は節分である。冬から春になる暦の切り替え日であるが、この日、日本ではなぜだか豆をぶつけて鬼を払うというしきたりが存在する。

 この風習は、中国から伝わった「追儺(ついな)」という行事が、奈良時代の宮中で執り行われたことに始まり、日本独特の形に変化していったものだ。基本は「厄払い」である。日本人は特に、実体のないものを何らかの形にしてみせることを好む民族らしく、「厄」を「鬼」の姿で表してみせたのというわけだ。みえない何か=「隠(おん)人(にん)」という音が、やがて「おに」に変化していった、と言われている。つまり、「鬼」は悪いものばかりでなく、「神」と呼ばれる部分ももともとは含まれていたのである。

 ということは、節分での掛け声は「鬼は外、福は内」ではなく、「悪い鬼は外、良い鬼は内」が正しいのだろう。

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