暑い夏にはビールを飲む量がおのずと増え、カロリーオーバーや痛風の心配が常につきまとう。血液中の尿酸(プリン体の老廃物)の濃度が高い状態が続くと起こる痛風は、昔からビールが主な原因と考えられてきたが、その相関性はどれほどなのだろうか。

「ビール好き医師」を公言する公益財団法人慈愛会会長の納(おさめ)光弘医師が自分の体で"実験"し、ある結果を導き出した。

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 私が痛風になったのは59歳のとき。大学病院の医師として痛風も専門のひとつだったので、まさか!と思いました。ビール好きだったので、痛みと禁酒でダブルショックです。

 そんななか、自分の体で実験しようと思いたち、飲酒量と尿酸値の記録をつけ始めました。開始は発作後4日目の2001年8月15日。断酒にもかかわらず尿酸値が上がったあと、29日からビール以外の日本酒か焼酎を1日1.5合まで飲んでみました。するとだんだん尿酸値が下がり、基準値(血液1デシリットル当たり7ミリグラム)内に。

 その後、ビールを1日に4リットル飲んでみたり、日本酒を6.5合飲んだり、断酒したりと、尿酸値の変化を観察しました。

 その結果、大量飲酒とともに尿酸値が上がり、日本酒換算で1.5合相当のアルコール (ビールで750ミリリットル)に抑えれば尿酸値が下がることが多く、断酒すると当然、尿酸値は下がりました。

 ところが不思議なことに、10月11日から1週間、断酒を続けても尿酸値が下がらなくなった。アルコールが尿酸値を上げるのは確かでしたが、まったく飲まないのに下がらないのはなぜ?

 そこで自分の生活を振り返り、たどり着いたのはストレス。痛風発作を起こしたころにも、大学病院の病院長の仕事で強いストレスがありました。このストレスこそが尿酸値を上げたのでは、と考えたのです。

 あれから11年。今は激務の院長職を退き、趣味の日本画などを描きながら完全予約制の診療をしていますが、毎日ビールを飲んでも尿酸値は上がりません。

 ビールは、やはりおいしい! ビール好きのみなさん、肥満にならないようにぜひ全体のカロリーに気をつけてくださいね。

※週刊朝日 2012年7月20日号