大儀見優季(撮影・六川則夫)
大儀見優季(撮影・六川則夫)

 なでしこジャパンがW杯連覇へまた一歩前進した。6月28日早朝(日本時間)、カナダのエドモントンでオーストラリアと対戦した日本は、後半42分に交代出場の岩渕が決勝点を奪い1-0と快勝。7月2日の準決勝進出を決め、W杯連覇まであと2勝に迫った。

 日本にとって今大会初のデーゲーム(現地時間で午後2時キックオフ)。加えて決勝トーナメント1回戦から日本は中3日に対し、オーストラリアは中5日の余裕がある。キックオフ時の気温は26度と思ったより高くなかったものの、体力の消耗が懸念された日本の立ち上がりだった。しかし、試合後の佐々木監督のコメントがこの試合を象徴していた。

「(オーストラリアは)意外に想定内で、相手のプレッシャーが弱かった」

 オーストラリアはシンプルにパスをつなぎながら、前線のサイモンやデヴァンナへタテパスを入れるオーソドックスな欧州スタイルの攻撃だ。このため、岩清水と谷がパスコースをよく読んで決定的なシーンは作らせなかった。

 さらに、助かったのは球際でのマークが緩かったこと。オランダ戦では動きを封じられた大儀見もポストプレーから何度も好機を演出した。正直、これだけ緩い守備で、オーストラリアはよくブラジルに勝ったと思ったほどだ。攻撃時の意外性はブラジルの方がはるかに上だろう。準々決勝の相手がオーストラリアでよかったと思わずにはいられなかった。

 ただ、押し込みながらも、最後のところで相手の身体を張った守備にゴールを奪えなかった。前半終了間際からオーストラリアは足が止まり、後半は宮間や大儀見が決定的な場面を迎えながらシュートがゴール枠に飛ばずゴールを破れない。すると、佐々木監督は後半27分に大野に代え岩渕を投入。ドリブラーである岩渕はオランダ戦でも決勝点をお膳立てした切り札だ。

 この交代策がズバリ的中する。後半41分に相手パスミスを阪口が拾い岩渕にパス。岩渕は左に流れながらドリブルシュートを放ったものの、これは相手にブロックされ左CKに。この左CKから宇津木、岩清水の連続シュートのこぼれ球を岩渕が押し込んで決勝点を奪った。岩清水は、一度はシュートをGKにブロックされながらも、粘ってパスをつないだ執念が岩渕のゴールに結びついたと言える。

 終わってみれば、これで日本は5試合連続して1点差の勝利。一見すると薄氷を踏むような勝ち上がり方かもしれないが、4年前と比べるとはるかに"横綱相撲"での勝利だ。というのも、4年前は準々決勝で地元ドイツ、準決勝では強豪スウェーデンと対戦したからだ。今大会はグループリーグを1位通過したことで組み合わせにも恵まれたと言っていい。

 さて、次の準決勝は地元カナダとイングランドとの勝者と対戦する。カナダは去年10月の遠征で3-2、3-0と連勝するなど相性はよい。対して、イングランドは前回のW杯で唯一黒星を喫するなど、日本が苦手とするハイボールを蹴りこんでくる相手だ。地元とはいえ、カナダが勝ち進んでくれば、日本にとってラッキーなのは言うまでもない。

サッカージャーナリスト・六川亨)