こうした向きには「KKRホテル中目黒(国家公務員共済組合連合会目黒宿泊所)」がお勧めだ。バス・トイレ付の部屋もある。ただし、東京メトロ・日比谷線・東急東横線・中目黒駅から徒歩約13分という立地は、いくら送迎があるといってもそのわかりにくさがネックだ。しかし、バス・トイレ付のシングルで1泊7500円という価格帯は魅力的である。国家公務員ならば6800円で宿泊できる。

 上記に挙げたすべてのホテルに宿泊したというホテルジャーナリスト・中田剛さんはこう話す。

「官公庁系といっても、実際の運営は民間企業が行っている。サービスそのものは都心の高級ホテルとまではいかなくともその質はの高い。宿泊目的だけなら何ら問題はない」

 しかし、これらのホテルは低価格帯からその経営が厳しいという側面もある。たとえば、福岡県が施設を所有していた「ふくおか会館」(千代田区)が今年3月末、閉鎖された。皇居近くという立地でもあり、オリンピック需要を見越して、その敷地を不動産業者に貸し出しオフィスビルへと再開発、賃料収入を得たほうが収益が高いと見越したためだ。

「官公庁といえども収益性が求められる時代、わざわざ低価格のホテルを運営するよりも採算取れる事業にシフトチェンジしたほうがいいという声は県庁や議会でもある」(香川県関係者)

 2008年以降、奈良県、広島県、山形県の同様の施設が「収益性の低さ」が外部監査で指摘され、その姿を閉じた。

 今、地方自治体が運営する宿泊施設は、先述の東京さぬき倶楽部のほか、島根イン青山(島根県)、富山赤坂会館(富山県)がある。どちらも官公庁系ホテルらしくシングル1泊で6000円台で宿泊が可能だ。そして、このいずれもが外部監査でその収益性の低さから「県が保有する必要なし」と指摘されている。遅かれ早かれ、ふくおか会館と同じ運命を辿ることは目に見えている。

 そう遠くない将来、東京都心で安価で宿泊することができなくなることもまた運命なのかもしれない。

(フリーランス・ライター 秋山謙一郎)

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