2人に1人ががんになる時代。がんと食生活の関係は奥深く、時代とともに変わる。また、「悪者」だった食品が一転、がんの発生率を抑える食品に変更されることもある。たとえばコーヒーがいい例だ。昔はカフェインの発がん性が疑われ、からだに悪い飲み物といわれていたのに、今や健康によい飲み物に変わった。肝臓がんをはじめ、いくつかの部位のがんのリスクを下げる可能性があることがわかったからだ。

 コーヒーは国内外で数多くの調査が行われ、現在のところ肝臓がん、子宮体がん、口腔がん、咽頭がん、食道がんの発症リスクを下げることがわかっている。コーヒーの研究をする東北大学大学院・公衆衛生学分野の辻一郎教授はこう話す。

「我々の調査では、コーヒーをまったく飲まない人に対して時々飲む人が肝臓がんを発症するリスクは約7割に、1日1杯以上飲む人になると6割に抑えられていました。また子宮体がんでも、毎日2杯以上飲む人では、ほとんど飲まない人に比べると発症リスクが半減し、さらに閉経後の女性ではリスクが3割まで下がりました」(辻教授)

 どちらのがんも、摂取が増えるほど発症リスクが低くなるという結果が出た。コーヒーを飲む人では、口腔、咽頭、食道がんの発症リスクも半減するが、こうしたがんの発症リスクを上げる「喫煙」や「飲酒」をする人でも、コーヒーを飲めば発症が抑えられたのだという。まさにコーヒーマジックだ。

※週刊朝日 2012年7月13日号