例えば中央線の「あるナゾ」も軍の施設と深く関連している。中央線は、東京駅から新宿を経由して立川・八王子方面に伸びる路線。同路線は都心部(山手線に収まる地域)で「S字」を描いているが、なぜ「S字」なのか。一部では、「このS字は陰陽図(大極図)を意味している」との都市伝説もあるというが、たしかに江戸時代から存在する甲州街道沿いに、まっすぐに鉄道を敷くのが自然であろう。
黒田氏は、これについても政府・軍の指示が影響しているとして「真実」をこう解説する。
「(前略)軍から横やりが入ります。鉄道は青山練兵場と、当時まだ残っていた三崎町練兵場(現在のJR水道橋駅南側一帯)を結んでつくるように、というのです。地図を見ればわかりますが、都心への最短距離にはほど遠い迂回路線になります。しかし、許認可権を持つ政府の意向には逆らえません。(中略)他の理由もありましたが、このような事情で中央線は新宿からぐるっとS字を描いて東京駅につながったのです」(本書より)
このように東京には、かつて軍都として栄えた軌跡や“傷跡”が数多く残っている。本書では黒田氏が、23区内の主な軍用跡地をすべて取材。そこにはかなりマニアックな情報も……。興味がある人は、本書を片手に黒田氏の“足跡”を辿ってみてはいかがだろうか。