今年2月に行われた東京都知事選挙。最終的には現都知事の舛添要一氏の圧勝に終わったが、選挙告示直前に「原発ゼロ」を掲げる小泉純一郎氏と共闘する形で細川護煕氏が出馬し、地方選の枠を超えた盛り上がりをみせたのは記憶に新しい。
そもそも告示ギリギリになって立候補する、いわゆる「後出しジャンケン」は都知事選では有効な戦略と言われている。細川氏のように全国的知名度のある候補者であれば、なおさらだ。ただ、皮肉にも細川氏の出馬で割りを食ったかのようにみえたのは、同じく「脱原発」を主張する弁護士・宇都宮健児氏であった。
そんな宇都宮氏が、その都知事戦の舞台裏などを描いた新著『「悪」と闘う』(朝日新書)を上梓した。
「本書では、今回の都知事戦についての記憶が鮮明なうちに経緯などを振り返りつつ、いままでに私自身がかかわったいくつかの『闘い』をお話していきます」(本書より)
宇都宮氏は選挙中、どんな“悪”と闘ったのだろうか。本書では次のように書かれてある。
「元総理の細川護煕さんが“脱原発”を掲げて立候補したことをめぐり、選挙戦には予想外の展開が連続しました。本来であれば宇都宮陣営と政策的に一致し、私の最初の都知事選ではともに戦ったメンバーたちから『一本化』を求める声が選挙戦の最終盤まで上がりつづけたり、回線がパンクするほど、組織的とも思われる脅迫じみた電話をかけられたりしたのです」
本来、味方であるべき「脱原発」を掲げた市民グループの人たちからも「宇都宮さんでは都知事選に勝てない。脱原発派の一本化のために降りるべきだ」と何度も言われたというのだ。しかし、宇都宮氏は「一本化交渉は不可能だった」とも振り返る。