14日(日本時間15日)、アレーナ・ペルナンベコ(レシフェ)行われたコートジボワール戦。ご存知の通り、逆転負けという悔しい結果だった。試合内容については、ほかの方がたくさん書くと思うので、私は会場にいたからこそ知ることができたエピソードをいくつか紹介したい。
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試合終了後、当地を訪れていた日本人サポーターの声に耳を傾けると、「本田圭佑の不調」について語る声を少なからず耳にした。実際、本田が相手にボールを奪われるシーンは多かったように思う。敗戦の原因とまでいかないまでも、まだまだ本調子ではないのだなという印象を私自身も抱いた。しかし、ブラジル人、コートジボワール人、フランス人、カナダ人など、私が話を聞いた外国人たちの見方は全く異なっていた。「今日の日本のベストプレーヤーは?」と聞くと、みな一様に「本田が一番だったよ」と言ったのである。
レシフェに住むブラジル人は、「本田がボールを失っていたのは間違いないけど、それは彼がチャレンジしていたからだと思うよ」と語った。カナダからワールドカップを見に来たという2人のサッカー愛好家も、「彼はジェネレーター(チャンスを生み出す人の意)だから、ボールをロストするのは当然だよ。それに彼は一点を取っているんだ。間違いなく日本のMOM(マン・オブ・ザ・マッチ)は本田だね」と話した。
同じような言葉は、外国人の話を聞くたびに出てくる。もちろん、彼らが本田の本調子を知らないだけかもしれない。本田や香川など、数人の選手の名前しか把握していないということもあるだろう。それでも、先のような意見を聞いてなるほどと思った。本田がボールを失うということは、つまりそれだけ危険なエリアでボールを受けているとも取れる。パスの繋ぎ役に終始するのではなく、“チャレンジ”していた証。外国人の目にはそう映っていたようだ。
ほかにも会場で見て感じたこと、見つけたことと言えば…。
ボールが観客席に飛び込んできた時、みんな楽しそうに記念写真をしていた。もちろん、ボールはただちにボールボーイに渡さないとマナー違反だ。でも、「少しくらいなら楽しんでも…」という雰囲気が会場にはあったことも確かだ。みんな、64年ぶりにサッカーの母国に帰ってきた“おまつり”を楽しみたい。そんな気持ちがすごく伝わってきた。
今大会のフリーキック時に登場する、審判が壁の位置に線を引く「白い泡」。試合が進むにつれ、白い線は増えるので、あっちにもこっちにも白い線が残ることになったら…と心配になっている方もいるだろうが、大丈夫。あの線は徐々に消えてゆくのだ。実際、何分くらいで消えるのか計ってみることにした。すると、コートジボワール戦では、消えるまで10分ほどかかっていた。意外と長く残っているので、観戦者の中からは「もう少し早く消えてもいいのでは」という声も。
それから、会場への入場ゲートでは、提示が必要と言われていた身分証は見せることなく会場に入ることができた。さらに、おおっぴらには活動していないようだけど、会場周辺ではダフ屋の姿も確認できた。
日本の勝敗も気になるところではあるが、サッカー王国のブラジルで開催される貴重な大会。少しはその雰囲気を伝えられれば幸いである。
(ライター&エディター 遠藤由次郎)