下川裕治(しもかわ・ゆうじ)/1954年生まれ。アジアや沖縄を中心に著書多数。ネット配信の連載は「クリックディープ旅」(毎週)、「たそがれ色のオデッセイ」(週)、「アジアはいつも薄曇り」(隔週)、「タビノート」(毎月)
下川裕治(しもかわ・ゆうじ)/1954年生まれ。アジアや沖縄を中心に著書多数。ネット配信の連載は「クリックディープ旅」(毎週)、「たそがれ色のオデッセイ」(週)、「アジアはいつも薄曇り」(隔週)、「タビノート」(毎月)
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サハリンの偽セブン-イレブン。このときの気温はマイナス16度でした
サハリンの偽セブン-イレブン。このときの気温はマイナス16度でした

「おや?」と思って立ち止まる。そしてはじまる旅の迷路――。バックパッカーの神様とも呼ばれる、旅行作家・下川裕治氏が、世界を歩き、食べ、見て、乗って悩む謎解き連載「旅をせんとや生まれけむ」。第21回は「ぱくり店名」について。

【写真】よく見ると違う? サハリンの偽セブン-イレブン

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 欧米や日本で人気のチェーン店の名をぱくった店名は、海外にでるとときどき見かける。軍事政権時代のミャンマーには多かった。「MAC BURGER」や「KSS FRIED CHICKEN」といった店名の前で、悩んでしまったものだった。

 こういったぱくり店名が生まれるには、いくつかの条件がある。政治状況や経済力、そして宗教などの関係で、その種のチェーン店が店を出さないというのが前提。それでいて、その国の人がそのチェーン店の名前を知っているという状況も必要になる。

 ミャンマーの「MAC BURGER」を例にとると、国内にマクドナルドはないのだが、ミャンマー人の多くがマクドナルドというハンバーガーチェーンを知っているということだ。マクドナルドが人気で、多くの人が「マック」と呼んでいるということも知っていなくてはならない。

 当時のミャンマーは軍事政権の貧しい国だった。マクドナルドが進出する可能性はなかった。しかし国民は欧米社会への強い憧れを抱き、情報には敏感だった。情報の発信源はミャンマーを離れた留学生や難民だったかもしれない。

「MAC BURGER」は繁盛していた。僕も食べてみた。そのハンバーガーの味は、マクドナルドとは似ても似つかぬまずさだったが。

 数年ほど前までだったろうか。世界のぱくり店名は、アメリカ生まれのファストフードが多かった。マクドナルドとケンタッキーフライドチキンが双璧だった。

 ところがいま、世界でよく目にするのが、偽コンビニというか、偽セブン-イレブンである。東南アジアにはセブン-イレブンが多いが、ライセンス契約や子会社形態ですべて本物。偽ではない。

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ペシャワールのバスターミナルにて…