改革では、他の国の例から学んだ形跡がないのも気になります。韓国では10年ほど前、入試に英語の4技能試験の導入を計画。波及効果が注目されましたが、実現せず頓挫しました。いま中国でも大規模な入試改革が進んでいますが、スピーキングを入れるという話は聞きません。

 今回の入試改革で、とりわけ重きがおかれているのがスピーキング・テストの導入です。その前提となっているのは、スピーキングのテストを入れることによって、日本人が英語を流暢に話せるようになるという期待です。しかし、テストを変えたくらいで流暢に話せるようになるわけがありません。そもそも、薄っぺらな内容を話すことに意味がありません。とつとつとしたしゃべり方でも、内容がきちんと伝わることのほうがよほど大事であり、実現可能で意味のある学校教育の目標です。

 また、「話せるだけの英語力」などというものもありません。聞いたり、読んだりして理解できているのに、全く話せない、全く書けないなんてありえないのです。全く話せないのだとしたら、読んだり聞いたりの理解ができていない可能性が高いと判断すべきです。

 英語の4技能は、それぞれ切り分けられるものでなく互いに関連しています。読んだ文章の内容理解を測るために、要約させたり、言い換えをさせたりすることがありますが、応答を口頭で行えばスピーキング・テストになりますし、筆記にすればライティング・テストになります。大事なのは「話す」「書く」といった便宜上の区別にとらわれるのではなく、「何を測りたいのか」。まずは、その目的を明確にしたうえでテストを設計することです。

 スピーキングの能力は、対話の能力、理解して発表する能力、発話の能力などが複合して成り立っています。民間試験には、試験官や受験生同士が対話する形があれば、コンピューターに吹き込む形式もあります。測る内容も、音読して内容に関する質問に答えさせたり、読んで聞いた内容を統合して話す力や対話の力を試したりと、実に多様です。

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入試の大前提は、実行可能性、公平性、信頼性の三つ