でも今回は、敵の姿も、終息の先行きも見えないからかえってやっかいである(テロの時は、団結を示すためすぐにブロードウェイの再開が決まったそうだ)。このような徹底的な集会制限の効果は一体どの程度あるだろうか。それは今後の感染者の増加スピードが示してくれるはずだ。

 指数関数的な爆発的増大さえ抑えることができれば、医療機関に患者が殺到することを回避でき、ほんとうの重症者の救急救命にリソースを集約することができる。つまりその分、人命を救える。一方、感染者の増大速度を抑えることができれば、その間に、ウイルス耐性(免疫)を獲得する者の数の増加を促す時間的余裕を与えることになるので、結果的に発症者の総数を抑えられるはずだ。その帰趨は今後、数カ月を経ないと明らかにはならない。

○福岡伸一(ふくおか・しんいち)/生物学者。青山学院大学教授、米国ロックフェラー大学客員教授。1959年東京都生まれ。京都大学卒。米国ハーバード大学医学部研究員、京都大学助教授を経て現職。著書『生物と無生物のあいだ』はサントリー学芸賞を受賞。『動的平衡』『ナチュラリスト―生命を愛でる人―』『フェルメール 隠された次元』、訳書『ドリトル先生航海記』ほか。

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