80年代、抜群のセンスで憧れのミューズとなり、「雨音はショパンの調べ」で鮮烈な印象を残した小林麻美さん。極秘出産と結婚を同時に発表して、91年に突如引退してから29年。その間どんな日々を過ごしていたのか。作家の林真理子さんが迫ります。
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林:1年ぐらい前、近所の焼き肉屋でお目にかかりましたよね。
小林:そうそう、びっくりでした。
林:私、そのことをみんなに自慢しても、信用されないんですよ(笑)。イケメンのご子息とご一緒でしたね。
小林:私、すごい格好をしてて、ばったり林さんに会っちゃって(笑)。こういうときに限って知り合いに会っちゃうんだよなぁって。
林:あ、そのダイヤの指輪、昔からしてるやつですか?
小林:40年ぐらい、ずっとこの指輪をしてます。
林:やっぱり素敵。私の人生のハイライトのワンシーンとして、ずっと昔、ユーミンの事務所から「小林麻美さんのライナーノートを書いてほしい」って言われて、ユーミンと小林さんと3人で飯倉の「キャンティ」で会ってお食事したんです。
小林:はい、お会いしました。
林:そのとき、小林さんがダイヤの指輪をしてて、ダイヤなんて特別のときにしかしないものだと思ってたから、こんなふうにふだん使いするなんてカッコいいなと思って、そのあと私、同じスクエアタイプのダイヤの指輪をつくったんです。
小林:そうなんですか。私、生意気だったんです(笑)。
林:あのころ頂点にいるカッコいい二人が親友同士で、「和菓子を食べながらダラダラ麻美としゃべってるの」ってユーミンがエッセーに書いて。よく覚えてるでしょ(笑)。
小林:よく覚えてる。二人でいるとそれがふつう。同学年で、いろんな共通体験があったりして、なにかわからないけど、ウマが合った。
林:でも、ある時期からユーミンが小林さんのことを言わなくなったから、どうしちゃったのかなと思っていて、今度出た本(『小林麻美 第二幕』朝日新聞出版)を読ませていただいたら、「25年間ずっとユーミンのことを思い続けてた」って書いてあって、まあステキ!と思いましたよ。