小林:ほんと? 忘れちゃった。

林:私、「そうか、センスってこういうことなんだ」と思ったんです。70年代80年代は、センスというものに対価が払われ始めた時代で、だからスタイリストが出てきた。でも、私みたいな人間は、なんでセンスってものにお金を払うのか、センスのある人ってどういうことかわからないわけ。だけど、「このリボン、“力なく”結んで」っていう言葉に凝縮されてたんですよ。「これがセンスっていうことなんだな」と思って、すごく覚えてるんです。

小林:自分ではぜんぜん覚えてない……。ごめんなさい。ボケちゃったかも(笑)。

林:発信した人は何気なく言っても、私たち末端の者はよく覚えてるんですよ。

小林:それは困ったな(笑)。

林:でも、またお仕事をピタッとやめちゃったんですよね。当時は女優さんとしても活躍なさってたし、ユーミンが詞を書いて小林さんが歌った「雨音はショパンの調べ」も大ヒットしたのに、そっちのほうもやっていこうとは思わなかったんですか。

小林:ユーミンと二人でアルバムを何枚かつくったり、ドラマやったり映画やったりしてたんですけど、でも、やめようと思っちゃったんですよね。子どもを産んで、子どもと生きる人生にしようと思って。

林:同学年だから、それは私もわかります。今の20代の人は「子ども産まなくたっていい」「子どもがいない人生もある」とか言うけど、私たちって、子どもを産まないと女としての人生が始まらないというか。

小林:そういう先入観というか、それはありましたね。それで仕事をやめて、37歳で子どもを産んで。

林:その間、ユーミンにも電話しなかったんですか。

小林:しない。電話もしなかったし、会わなかった。

林:そして去年、二十何年ぶりでユーミンの武道館のコンサートに行ったんですね。

小林:そう。武道館のライブの最終日に行って、終わって打ち上げの部屋に行ったら、テレビの取材がいっぱい入ってて、それも終わって、すごい久しぶりに会って、抱き合って泣いちゃいました。

林:あのクールなユーミンも泣いた?

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