新型コロナウイルスによる重度の肺炎により入院中だったタレントの志村けんさんが、3月29日に亡くなられた。70歳だった。あまりにも突然襲ってきた訃報を、多くの人が驚きと悲しみをもって受け止めた。
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来年40歳になる筆者は、子どもの頃から志村さんの笑いを見て育った。ラーメンライターという筆者の肩書きでは笑いを語るべきではないが、“ラーメン”という枠組みの中でも志村さんについて語りたいことは色々ある。
まずは、「ひとみ婆さん」のコントだ。リアルな婆さんキャラには定評のある志村さんだが、ひとみ婆さんはその集大成といえる。強烈な天然ボケキャラで、毎回とんでもない展開で笑わせてくれた。ラーメン屋はこのコントの代表的な舞台のひとつだった。
何度注文を言っても聞き間違えたり、丼のスープに指が浸かっていたり。天津丼のことを、「てんつどん」と呼ぶのもお決まりだった。キャラクターやその演じ方は強烈だが、昭和の古き良き風景をそのまま切り取ってきたかのような温かみがあった。だからこそ、多くの人の心を動かしたのではないか。
志村さんは実際にあった光景をもとにキャラクターを作り上げることが多いと聞いたことがある。ひとみ婆さんも、深夜の居酒屋に実際にいたお婆さんが題材になっているという。ひとみ婆さんの店は今でいう「町中華」的な店だった。
町中華とは、昭和の雰囲気漂う安く食べられる個人経営の中華料理店のこと。町中華はチェーンの中華料理店の増加、店主の高齢化や後継者不足もあいまって減少傾向にあり、絶滅の危機にあるが、今再び注目を集めている。
おやっさんやおかみさんとの会話こそが町中華のスパイスだと筆者は思う。その魅力は、味+αの価値がある。キャラは強烈だが憎めないひとみ婆さん。会社帰りの疲れたサラリーマンが寄った町中華でひとみ婆さんと繰り広げるやり取りの中には人のぬくもりがあり、それは現在の町中華ブームにおいて、我々が求めているものがそのまま体現されたかのような作品だった。
■ケンちゃんラーメンとボールペンの凄さ
そして、もう一つ忘れてはいけないのが「ケンちゃんラーメン」。