ジャーナリストの田原総一朗氏は、緊急経済対策の目玉である現金給付について、条件の複雑さなどに苦言を呈する。
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4月7日に安倍晋三首相は、やっと緊急事態宣言を発出した。
3月中旬から、緊急事態宣言を出すべきだという声が強まり、4月1日には日本医師会が宣言の発出を強く要請したのに、安倍首相はなぜ延ばし続けたのか。
その要因とされているのは、財務省の強い反対である。
現在、政府の借金である債務残高は1100兆円を超え、対GDP比で230%となっている。先進国では最悪の財務事情で、財務省としては緊急事態宣言で、当然必要となる100兆円以上の財政出動など無理と捉えてきたのだ。それに、つい数カ月前まで新聞やテレビなども、危機的財務事情だと強く訴えていた。そのために、閣僚たちの多くも、緊急事態宣言には賛成ではなかったのだ。
だが、国内の感染者が6日発表時点で4千人近くまで拡大し続け、東京都で千人超、大阪で400人超と急増し、このままでは医療崩壊が起きると捉えて、安倍首相は宣言を決断したのであろう。
国民の多くが、あまりにも遅すぎるといらだった。
そして、緊急事態宣言が出されて、過去最大規模の緊急経済対策が打ち出されたのだが、その内容は不安解消には程遠い、と言わざるを得ない。
事業規模は108.2兆円だが、最大の目玉事業は総額6兆円超の現金給付である。
コロナショックで、すさまじい数の人々が仕事を失った。たとえば、フリーランスのカメラマンや通訳、さらにライブハウスなどが休業せざるを得ないので、多くの芸能人が活躍する場を失い、スポーツイベントなどもほとんど停止となって、おびただしい数のプロ選手たちの仕事がなくなってしまったのだ。
また、観光業や飲食業なども売り上げがガタ落ちとなって、多くの従業員たちを解雇せざるを得なくなった。特に、派遣社員などはどんどん解雇されている。
そうした人々には、1世帯あたり30万円が支給されることになっているのだが、一人ひとりが収入減少を証明する書類を市町村に提出して自己申告しなければならないのである。